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恋した夜の過ごし方5

 「どうした?」  教授が考えこんでいるオレに声をかけた。   「いや、ちょっと気になって」  オレは考え込んでいた。  いよいよ明日が再現の日。  オレは教授やあの人と監修した台本を読んでいた。  再現ドラマの方は役者さんがする。  明後日に。  オレはリハーサルと、検証を兼ねて遊女を再現をすることにしていた。  もちろん、心中相手はあの人だ。  検証なので、テレビカメラも回らない。  テレビのスタッフも来ない。  こちらが本当の目的で、明後日の再現ドラマは正直、本来の目的ではないのだけど、  でも、仕事である以上、テレビ用の再現ドラマもキチンとしたものを作らなければ。  で、結構頑張って台本をつくったのだけど(もちろん、テレビ向けにするため、厳密な時代考証まではしない)、読み直ししていて思うことがあったのだ。  「歌舞伎や浄瑠璃を元にして台本書いたんですけど、色々心中物を読んで見てたら、遊女達は死にとりつかれてんですよね」  最初から死ありきかのように。  オレ達の学問は歴史専門ではないので、本来は監修するのもおかしいんだが、そこは有名人であるあの人の(ベストセラー作家)名前のためで。  教授も、髭の先生としてテレビで活躍していた頃もあったので。  テレビに出ていた理由を、「仕送りに金が必要で」と教授は教えてくれた。  異国にいる教授の子供達のためだったそうだ。  今みんな大人になったので 必要なくなったのでテレビには出ないそうだ、仕事は全部あの人に回してる。  あの人は変態だし、鬼畜だし、最低だし、最近はストーカーでもあるけれど、  容姿端麗、話も上手く、不思議な事件で失った左手さえ魅力的にみせて、凄く稼いでいる。   「この時代は心中が大流行したからな」  教授が頷く。  「幕府が心中を禁止したくらいですよね、この事件を元にした歌舞伎も何度も上演禁止になってますよね、何でそんなに流行したんですか?」  オレにはわからない。  死んで何になるというのだろう。  「死ぬことが生きることだったからだよ。特に遊女には」  教授は言った。

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