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悪鬼のような夜の過ごし方1

 「セ、セフレと言うヤツか?」  真っ赤になりながら教授が言う。   「と言うより同じ乱交サークルにいたので、ほぼ行きずりみたいなもんですが。二回ほど会いましたよ」  オレは正しく説明する。  オレはパジャマで、教授は昨日のままの格好で。  朝のコーヒーを飲んでいた。  教授が入れ直してくれた。  教授昨日から着替えていない。  オレについていてくれだんだろうか。  パジャマ、教授じゃないよな、着せてくれたの。  あの子であることを祈る。  なんとなく、恥ずかしいから。  テレビの画面にあの男の子が映る。  可愛い子だったのに。  可愛くて、エッチで、楽しい子だった。  殺されるなんて。  身体を何度となく刺されていたらしい。  危険意識が低い子だったから、危険な相手に捕まってしまったのだろうか。  「乱交サークル・・・」  教授のキャパを色々越えてしまったようだ。  でも珍しくこの手の話題に教授が食いついた。  「じゃあ、君はこの子と?でも、こんな女の子みたいな子が君を・・・」  何を想像したのかは分かった、教授は口をパクパクさせている。  残念なハンサムぶりだ。  「ああ、その子相手ではオレは入れる方」  オレは教授に説明する。  「オレは入れるのも入れられるのも両方なんで」  「入れるって・・・」  教授はさらに赤くなった。  そこから何か考えこんで、突然首を振り始める。  「いや、無理だ、それはさすがに私には無理だ」  苦悩の呻きをあげている。  何が無理なんだろ。  「相手次第なんですよ。オレは。気持ちよければ何でもいい」    オレは薄く笑った。  「それはウソだな」   教授は当たり前のように言った。  「え?」  オレは驚いて聞き返す。  オレはビッチで通ってるし、それをむしろ誇ってきたくらいなのに。   「私は君がアイツをどれだけ好きだったのか知っているよ。見てるだけで胸が痛む程だった。あん な風に人を愛せる人間が、快楽だけでいいと思うはずがない」  教授はさらりと言った。  あまりにさらりと言われて、だからこそ、本気でそう思ってくれてるんだと知って、なんだろう。  胸の奥が暖かくなった。  何だろう、これ。     何でオレの顔が赤くなってるんだ。  オレ、オレ、オレは。  嬉しかったんだ。  でも、オレはとりあえず、話を続けた。  「あの人が行方不明ですか。ありえませんね」  オレは首をひねる 。  オレも教授と同じ意見であの人があの子を置いていなくなるとは思えない。  拉致監禁するレベルというか、実際してたレベル の執着をあの子にはしているからだ。   「でも、身体はなくても来たらしいがね、あの子によると。アイツ、この家ではセックス禁止だと言い渡しておいたのに、身体もないくせに 、あの子をおそって寝込ませているよ」  教授が怒っている。  あ、それであの子は起きてこないのか。  可哀想に。  てか、身体がないって?  「殺されましたか、とうとう。あちこちで恨みを買ってますからね」  オレは納得した。  あの人は今こそあの子のみに執着しているが、本当に見境なしだったから、男も女も、人妻、既婚男性、誰かの彼女、誰かの彼氏、どんどん気にせず手を出していた。  多少時間がたった位でなくなるような恨みでもないだろう。    死んでも会いに来たか。  死んだ位であの子を諦めるとは思えないしな。  「死んではいないらしい。どこかに身体はあるらしい、そうあの子が言っていた。殺そうと思ってもなかなか殺せないよ、アイツだけは」  教授は何故か残念そうに言う 。  「なんですか、それ?」  でもあの子が言うならそうなんだろう。   「まあ、どうせ今晩もあの子のとこに出てくるだろうからそこで捕まえよう」  それは置いといて、と教授は話を続ける。  生死を置いておかれてしまうあの人を少し気の毒に思ったが、自業自得だよな、とも思った。    しかしオレとしては困る。  「オレとしてはあの人がいてくれないと困ります」  オレだってこの取り憑かれている状況をなんとかしないといけないんだ。  あの人がいないと儀式ができないし。  って何で、突然、教授怖い顔してるんだろう。  教授が立ち上がって、テーブルの向こうからオレに向かって手を伸ばしてきた。  なんで、教授の両手がオレの頬を挟んでて、なんでこんな近くに教授の顔があるんだろう。  こうやってみたら、やっぱり教授はハンサムだなぁと。  やつれているのが何だか余計に、どこか男っぽい色気を感じさせていて。  無精髭が、寝てないクマが、なんだか愛しくて。  なにが起こっているのか分からなくて、オレは呆けたように教授を見つめる。  「やはり、君はアイツを、まだ」  低い声で教授が言った。  教授の手が熱い。  教授の指は熱い。触れた時いつも。  体温高いのかな。  教授の瞳が黒くて、熱くて、何でそんな目でオレを見るんだろう。  オレは、オレは、何でドキドキしてるんだろう。  オレはオレは何で、 見られることに耐えられなくて目を泳がしてしまってるんだろう。  「でも、もう離すつもりはない」     教授っていい声してるよな、みたいなことを、フワッと考えていて、  何で、顔が近づいてくるわけ。   これじゃ、キスされるみたいな、みたいで、ああ、される、されるんだ、と思った。  唇が触れるか触れないかのところに来た時、オレは思わず目を閉じた。  「お父様!!おはようございます」   可愛い声がして、オレも教授もものすごい勢いで離れた。  

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