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悪鬼のような夜の過ごし方5
あの人は簡単に見つかった。
警察からの連絡があって、警察署に任意同行させられていた。
今回もすぐに釈放された。
証拠が残りすぎていて、明らかにあの人ではないのが分かるそうだ。
犯人はおそらく返り血を浴びたまま凶器を持って、夜の街にいる。
パチーン
リビングであの子が思い切りよくあの人の頬を張っていた。
出会い頭にコレだ。
あの子をあそこまで怒らせるなんて。
教授が今回は連れて帰ってきたのだ。
外のテレビカメラ達はもう仕方がない。
「なんて馬鹿なんですか!!身体まで乗っ取らせて!!」
あの子が怒鳴った。
へぇ、乗っ取られる?
「コレには事情があってさ、ちょっと話を聞いてくれよ、綺麗な兄さん」
あの人がらしくない言葉使いで喋る。
「どうせ、幽体だったら何時でも僕に会えるとかそんな理由で説得したんでしょ!!」
あの子が怒鳴った。
「何で兄さん分かるんだ。コイツ、大事な想い人に逢えないと悩んでいたから、魂ならば千里をも超えて会いに行けるぜと言ったら、突然協力してくれて」
あの人、いや、取り憑いているヤツが言って、
バチーン バチーン
二回あの子にひっぱたかれた。
「そんな馬鹿な理由で、身体を明け渡すなんて」
泣いているのが情けないからなのは、オレにも分かる。
いや、めちゃくちゃ気持ちがわかる。
あの人、あの子とやりたい理由だけで、身体をなんだか分からないもの相手に明け渡したのだ。
馬鹿だ。
本物の馬鹿だ。
「いや、綺麗な兄さん、おれも痛いからやめてくれないかな」
あの人に取り憑いているモノが頼んでいる。
中身が変われば受けるイメージもちがうんだな、と。
あの人は随分、親しみやすい感じになっていた。
「あんたも悪鬼、悪霊の類でしょうが!!」
あの子が怒鳴る。
ええ、悪鬼。
随分親しみやすい悪鬼だな、と。
「確かにおれは悪鬼の類だけどよ、でもあんた達と利害は一致してるんだぜ」
あの人、いや、悪鬼はオレの方へとやってきた。
オレ目を覗き込み、笑った。
あの人がそんな風に笑うところは見たことがない。
開けっぴろげな笑顔だった。
人間は中身だな。
同じ顔でも中身が違えば全く別人なんだから。
「見つけたぜ。おれはおめぇを助けに来たんだ」
そして、オレは抱きしめられた。
強く。強く。
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