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仕組まれた夜の過ごし方6

 組み敷かれ、抱かれると思ったのに、幼なじみがしたことはあちきの手足を縛ることだった。  「何するんだい」  あちきは怒鳴る。  用意していたらしい紐であっと言う間に縛られてしまう。  「それはこっちの台詞だ。何を企んでやがる。テメェの手管はおれには通じないぜ」  幼なじみは鼻で笑う。  でも、とあちきの顎をつかみ唇を重ねて、舌を絡ませた。  予想外の上手さにあちきは驚く。  すぐに離れた。  「まあ、これは良かった。立っちまった。それは認める」  「あちきの手管十分通じているじゃないか、いいから手足をほどきな」  あちきは手足をばたつかせる。  外れない。  「ダメだね。今日は大旦那が来るまでそのままだし、大旦那が帰ってからも縛る。何か企んでるのは分かってんだ」  なんてこと。  「厠に行きたくなったらどうすんだい」  あちきは怒鳴る。  「安心しな、尿瓶は用意してるぜ。おれがとってやるからよ」  幼なじみはにやにや悪い笑い方をした。  なんてヤツ。  これじゃ、これじゃ。  今日の計画が。  あちきは暴れたけれど、びくともしなかった。  「おれはちょっと出かけてくるけど、逃げようとは思うなよ、店のもん全員に見張るように言ってあるからな」  幼なじみは笑った。  そして、あちきを抱き上げて、布団の上に転がした。  そのまま離れるかと思ったら 、不意に真面目な顔をしてあちきの顔を覗きこんだ。  「悪いことは考えんな。お願いだから。おれが出来ることなら何でもしてやるから」  幼なじみは囁いた。  囁かれ、唇だけをそっと重ねられた。  すぐに離れたその体温は 、やけに身体の奥をうずかせた。

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