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仕組まれた夜の過ごし方7
車で彼を一緒に大学に行きながら、私は何度も笑いをかみ殺していた。
可愛い。
可愛いすぎる。
いつもクールで冷静な彼が、おかしい。
おかしすぎる。
「大学に」
私が話かけると、助手席の彼の身体がビクンとゆれた。
「あ、はい、何ですか」
声が裏返っているし、顔は赤いし。
ダメだ。
可愛い。
私を意識しすぎだろう。
笑わないように努力する。
「大学にアイツをつれて行くと大騒ぎになるから、また帰りに家に寄ってくれるかな」
「は、はい」
彼は俯く。
言葉が続かない。
下をむいたまま動かない。
緊張している。
可愛い。
いつもならクールな調子で嫌みも入れながら喋るのに。
予想外の可愛さだった。
駐車場に車を止めた。
「ありがとうございます」
いそいそと、降りようとする彼の腕を引き止める。
真っ赤になって振り返る顔がもう可愛いすぎて。
抱き寄せて、唇を重ねて、貪る。
彼は私の腕の中で震えていた。
震える彼を抱き締める。
よくもまあ、こんな彼が、乱交など出来たものだ。
真面目だからな。
私は唇を離してから彼に笑いかける。
彼はオロオロと目を泳がせる。
真面目に、不真面目をやっていたんだろう。
彼の言うところの、ビッチを真面目にやっていたんだろう。
こうすれば真面目じゃないということを全部真面目にやっていたんだろう。
結局のところ、彼は真面目で純情なのだ。
「ゆっくり慣れよう。時間はある」
私は彼に囁いた。
彼は小さく頷いた。
やはり可愛い。
可愛いすぎる。
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