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満願成就な夜の過ごし方1

 あの人にとりついた悪鬼は変な話しだが意外と話しやすかった。  リビングのテーブルに座る悪鬼を見つめる。  朝からあの人のことが嫌いな妹がまとわりついていた。  「昔から来たの?」  「おおよ、可愛いお嬢ちゃん」  「サムライ?」  「そんな芋くさいもんはごめんだねぇ」   「サムライは芋なの?」    「芋芋。あんなのはゴメンだねぇ」  「おもしろい~」  妹とあの人が仲良く話しているという光景は、異様だった。  有り得ない光景だった。  妹はあの人が好きじゃないからだ。   というよりは嫌っている。  僕はため息をつく。  本人も悪鬼だと言うし、確かに凄まじい遺恨からこちらに留まっているのは間違いなく、良くないものなのは間違いないのだけど。  「綺麗な兄さん、アイツが入った兄さんはいつ戻ってくるんで?」  学校に行く、と出て行く妹に手をふりながら悪鬼は尋ねた。  「大学に寄ってから夕方には戻ってくると思うよ。電話があった」  お茶を置いたけれど、飲みたくないとのこと。  憑かれた人間は食事が不要になるのだとか。       さんもほとんど食事残していたことを思い出す。  「憑かれてるのに呑気だなあ」  悪鬼に呆れられる。   「あの人達は学者だからね、死ぬ直前まで研究してるよ」  僕も悪鬼となれ合っているのが怖い。  あの人の外見だからなのかな。    いや、中身が違うとこんなに人って違うんだってのを痛感している。  怖いなぁって思うのは、悪鬼の方がはるかにマトモに思えることだ。  取り憑かれてないあの人のが狂ってる。  悪鬼の表情が変わった。    テレビに映るものを見て。  「このテレビってのは、他の沢山の人も見てるっ てことでよろしいんで?」  昨日の教授と  さんがこの家から出て行くシーンが映っていた。  「そうだけど」  僕は戸惑う。  「あの兄さんにすぐ連絡を。アチラも見てる可能性がある」  悪鬼が言った。

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