73 / 126
満願成就な夜の過ごし方1
あの人にとりついた悪鬼は変な話しだが意外と話しやすかった。
リビングのテーブルに座る悪鬼を見つめる。
朝からあの人のことが嫌いな妹がまとわりついていた。
「昔から来たの?」
「おおよ、可愛いお嬢ちゃん」
「サムライ?」
「そんな芋くさいもんはごめんだねぇ」
「サムライは芋なの?」
「芋芋。あんなのはゴメンだねぇ」
「おもしろい~」
妹とあの人が仲良く話しているという光景は、異様だった。
有り得ない光景だった。
妹はあの人が好きじゃないからだ。
というよりは嫌っている。
僕はため息をつく。
本人も悪鬼だと言うし、確かに凄まじい遺恨からこちらに留まっているのは間違いなく、良くないものなのは間違いないのだけど。
「綺麗な兄さん、アイツが入った兄さんはいつ戻ってくるんで?」
学校に行く、と出て行く妹に手をふりながら悪鬼は尋ねた。
「大学に寄ってから夕方には戻ってくると思うよ。電話があった」
お茶を置いたけれど、飲みたくないとのこと。
憑かれた人間は食事が不要になるのだとか。
さんもほとんど食事残していたことを思い出す。
「憑かれてるのに呑気だなあ」
悪鬼に呆れられる。
「あの人達は学者だからね、死ぬ直前まで研究してるよ」
僕も悪鬼となれ合っているのが怖い。
あの人の外見だからなのかな。
いや、中身が違うとこんなに人って違うんだってのを痛感している。
怖いなぁって思うのは、悪鬼の方がはるかにマトモに思えることだ。
取り憑かれてないあの人のが狂ってる。
悪鬼の表情が変わった。
テレビに映るものを見て。
「このテレビってのは、他の沢山の人も見てるっ てことでよろしいんで?」
昨日の教授と さんがこの家から出て行くシーンが映っていた。
「そうだけど」
僕は戸惑う。
「あの兄さんにすぐ連絡を。アチラも見てる可能性がある」
悪鬼が言った。
ともだちにシェアしよう!