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終わりへと進む夜の過ごし方12

 わたしは神様の花嫁になるために育てられた。  兄様と私は10年に一度の儀式のために、生きていた。  二十歳になれば、花嫁として祭りの日に神様に身 を任せなければならない。  去年兄様は花嫁となるはずで、わたしはその10年後、花嫁になるはずだった。  それは一晩中続き、花嫁達は神様に殺される。  誰もそれを見たことはないけれど、神様に殺された花嫁の死体がどんなのだったはこっそりささやかれてた。     手足が全部逆に向いていた、とか   アソコから腹まで裂けていた、とか   後ろの穴から、口までデカい何かで貫かれていた跡があった、とか。  わたし達花嫁は、儀式まで他人の精を身体に受けたり、人に放ったりしてはいけないと教えられる。  でも、神様を迎える時に、怯えたり、怖がったりしてはいけないので、男の身体女の身体については教えられる。  それがどうやって使われるのかも。  町の人達はわたし達の身体には絶対に、手を触れないけれど、わたしは人がどういう風に身体を繋ぐのかも10才になるまでには知っていたし、男の人同士ならどこをどう使って繋がるのかも知っていた。  わたし達は、全てを受け入れるように教えられる。  苦痛も快楽も。  もしもその時がきたら、恐れることなく、神様に殺されるように。  お父様は、「教育」と言ってあの人と兄様が私のいるところでは、セックスしないように言っているみたいだけど、わたしはとうの昔にそれについてはよく知っている。  だから気にすることないのに。  あの人は好きじゃないけど。  お父様も、  さんとセックスしたらいいのに。  わたしは大人になったら、  さんと結婚するけれど、それまでは別にお父様と  さんがセックスしていても構わないのに。  兄様とも話しあったけれど、わたしや兄様は、普通の人達とは考え方が違うらしい。  だから、普通についてもう少し学ばなけばならないのだけど。  だから、わたしはわたしの目の前で男の人と男の人が繋がっているのを見ても、別になんとも思わなかった。  「オレはちょっと仕掛けをしてくる。お前はこの女の子を見張ってろ」  男の人は 、高校生位の男の子のお尻の穴から自分のものを引き抜きながら言った。  男の子は、ぐったりとベッドに横たわっていた。  息が荒い。  男の人はクスクス笑いながら、男の子の髪や唇にキスしていた。  女の人を殺した後、床に引き倒して男の子のお尻の穴に自分のものを入れていた時とは全然ちがって優しい感じだったので良かったとおもった。  女の人は、この人達が家に入って来ると同時に殺された。  でも、長いこと苦しまないですんだから良かったと思った。  何時間も苦しみながら死ぬのはきっと辛い。  私も兄様もそう死ぬはずだったからそう思う。  その後で、男の人がもう死んでいる人を何度も刀でさしたりしたことの意味は理解できなかったけれど。  一度死んでしまえば、もう殺せないのに。  一度男の人に頬を殴られたけれど、それだけだった。  わたしは大丈夫。  ずっと準備してきたから。  それに、大丈夫。  きっとお父様や兄様が助けてくれるから。  わたしは、目の前の出来事は出来事として受け入れながら、わたしの中に閉じこもっていた。  こうすれば、何も怖くない。  男の人が 、鼻歌をうたいながら、シャワーを浴び、服をきちんと着て鏡で確認し、男の子にキスして出て行くのも、わたしはきちんと見てはいた。  でも、大丈夫。  何をされても、あの人達はわたしの中に閉じこもったわたしには手を触れられない。  そんなわたしをわたしの中から、外へ呼び戻したのは男の子の声だった。    「何みてんだよ」  不機嫌な声で男の子は言った。  男の子は裸のままでわたしを睨みつけていた。  男の人とした跡が残ったままの身体を隠そうともしないのでわたしは悩んだ。  「なぜ恥ずかしがらない野か」。  セックスをした後の姿を他人に晒すのは「恥ずかしい 」ことではないのかもしれないと。  でも考え直す。  この男の子が普通ではないのた。きっと。  いや、ひどく男の子が動揺しているのがわたしにもわかった。  「オレは、ゲイじゃねぇからな!」  男の子はわたしに向かって怒鳴った。   男が好きな男の人をゲイと言うのは知っていた。    さんがそうだもの。  自分でゲイだって言ってた。  この男の子、あの男の人とセックスしていたのに、ゲイじゃないと言うの?    嫌そうにはみえなかったけど。  わたしは首を傾げた。  「オレは違う・・・」  男の子は頭を抱えてベッドの上にすわりこんでいた。  泣いていた。  「あなたいくつ?」  わたしは質問してみる。  突然質問されて驚いたのか男の子は顔をあげた。  「16」     わたしと5才違いね。  そんなには変わらないわ、きっと。  「あの男の人の仲間?」  「違う」  男の子は即答する。  「オレだけは殺さないでくれるって 。特別だから」   男の子は膝を抱えて言う。  「ストックホルムシンドロームね」  わたしは断言した。  わたしの兄様がかかった病だ。  監禁されるとその監禁する犯人が好きになるってやつ。  兄様はアイツに監禁されて、それになっちゃって今現在もその監禁犯とつきあっている。   「閉じ込めた人を好きになっちゃうの。でも、外にでれたら、気持ちも、消えるわ」   兄様の場合は消えなかったけど。  腹が立つことに。  「消える・・・」  男の子は繰り返した。  「オレは特別だって。オレは可愛いって」    男の子は頭をかかえてうずくまる。  わたしは分かった。  この男の子、あの男の人に捕まってから初めてあの人から離れることが出来たんだ。  今、初めて、ちゃんと考えられるようになったんだ。  これは 、チャンスなのかもしれない。 

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