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絡まった夜の過ごし方4
わたしは言った。
「帰って」
あの人は言った。
「お前本当に俺が嫌いだな」
あの人はあまりにも、当然な感じで目の前に立っていたから、一瞬本当に立っているのかと思った。
そして、次は夢か何かなのかと思ったの。
でも、わたしが絶対この人の夢なんか見ない自信があったので、わかったの。
これ、この人の生き霊だわ。
今、この人悪鬼さんに身体を渡してしまっている代わりに身体から自由に出られるようになったんだった。
「助けてくれるなら別だけど、違うんだったら帰って」
わたしは言う。
この人、嫌い。
わたしの兄様を独り占めしようとしている人だから嫌い。
「まあ、この幽体で出来るのはセックスぐらいなんだけどな、というよりそれがしたくて幽体になったんだけどな」
あの人はのんびり言った。
「帰って」
わたしは冷たく言う。
何しにきたの。
わたしとセックスするようになったらこの人もう終わりだわ。
兄様を鎖で繋いだり、目隠ししたり、拉致監禁したりだけでも終わっているのに、
元々男女問わず、人数場所的関係なしな人なのは、 さんから聞いいるし。
10才の兄様に一目惚れした最初からがあきらかにおかしい人。
11才のわたしに手を出したならこの人は本当に終わっているわ。
「お前となんかしないぞ。俺はお前の兄貴一筋だ」
あの人。
だから、
「そこが一番嫌いなの。わたしの兄様なのよ」
なんだってば。
わたしの兄様なのに。
部屋の外で、終わりなく繋がりあう男と男の子の声がする。
取り憑かれた男は、もう人を殺すことかセックスでしか精気をとれない。
男の子もそう。
2人は今、お互いを本当に自分達を食べ尽くしている。
それはお父様の部屋でみた、互いの身体を食べ合う蛇の模様を思い出させるものだった。
部屋の外、ドアへあの人は面白そうに目をやった。
何なら見に行きたいのだろう。
「俺がお前の兄様の物なんだよ」
あの人が笑う。
「兄様にさっさと捨ててほしいわ」
わたしは正直に言う。
「酷いなお前。お前本当にオレが嫌いだな」
あの人が絶句する。
「オレの身体は貸してしまっているから 、身体があれば出来ないことをする。魂は1日千里を走れるからな。お前の様子を見に来るのもその一つだし、何より情報を持って帰れる」
あの人は言った。
なる程。
考えたのね。
でも、どうせ。
「セックスするためだけに、身体を貸したくせに」
わたしは睨む。
「当然だ。俺は生きてる限り、お前の兄貴とヤることを全てにおいて優先する」
断言されてしまったわ。
だから嫌いなこの人。
「で、どうだ。何かされたか。ヤられたか」
あからさまに聞かれる。
本当に何かされてたらそんな聞き方するのはものすごくデリカシーがないと思うのだけど、この人には人間性が皆無なので気にしてはいけない。
「大丈夫だと、兄様やお父様に伝えて」
わたしは答えた。
「そして、男の人はもう完全に取り込まれているって。男の人と一緒にいる男の子とはお友達になったから、2人で生き延びてみせるって」
あの人は私を呆れたように見つめた。
「誘拐犯の一人と友達になったのか」
「あなただって兄様を誘拐して監禁してたでしょう」
私は言っておく。
結果的にわたしたちを助けてくれたけれど、この人も十分すぎるほど犯罪者だわ。
「まあ、な。しかし兄貴は誘拐犯を恋人に、妹はお友達にか。お前ら、俺より狂ってるぞ」
この人に言われたら傷つくな。
「しかし、いいなあ、ずっとヤれて」
この人は男と男の子の声を聞きながら呟く。
この人は取り憑かれもいないけれど、放っておいたらずっと兄様とセックスしていると思う。
この人は取り憑かれなくてもナチュラルにおかしい。
「コイツが、アイツを襲わせたんだよな」
あの人はゾッとするような顔をした。
普段の淡々とした表情からは想像もつかないような顔。
この人の執着の全ては兄様にだけある。
「ちゃんと助けてやるから安心しろ。アイツが泣くのは嫌だからな。そして、お前を攫った男はな、絶対にこの世から存在を、消してやる」
あの人は消えた。
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