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狂騒する夜の過ごし方1

 「似合わない、最悪」  オレは呻いた。  絶望的に似合わない。  「そこまで言うのかい」  教授が苦笑いした。  教授が着るにはあまりにも、その服はそう、軽すぎた。  もっと若い、金のある男の遊び着だ。  センスは悪くないけれど、悪く言えばゲイくさい。  教授の顔立ちや体型や年齢には、似合わなさすぎた。  メールて指定された店で指定された服を買って、教授に着せているのだけど、酷い。酷すぎる。  ここまでにあわないなんて。  オレはそれなりに服には気を使っている方なんだけど。  イケてるゲイである自認はあるわけで。  こんな服を愛する人に着せて一緒にいなきゃいけないのは何の罰ゲームなのか。  店員さんも絶望的な目を教授に注いでる。  でも、全部買う。  かなりの値段だ。  安い店じゃない。  店員が驚く。  ここまで似合わないと分かっていて買う客はいないからだ。  ズボンなどは仮縫いしてもらうだけにした。  どうせ捨てる。  捨てさせる。  オレにも似合わないし。  あの人なら着れそうだけど、あの人は年中同じような黒い服しか着ない。  何着も似たような服がクローゼットに入っているらしい。  服について考えるのがめんどくさいかららしい。  ただし、あの子にはどんどん服を買って無理にでも着せているらしい 。着せ替え人形と間違っている可能性はある。  教授は顔と髪を隠す、サングラスと帽子を買えば、少しは見られるようになった。  教授は車を取りに行く。  このショッピングモールの駐車場においてあると言う。  駐車場まで歩く。  この後からは別行動になる。  それがあの男の指示だ。  でも、まだ指定された時間には早い。  まだ時間がある。  オレは教授の腕を掴んだ。  少しでも一緒にいたい。  まだ行かないで。    教授は困ったような顔をした。  「行かないでなんて言わない。でもまだ時間がある」  オレは腕を掴んだまま、下を向いた。   「あなたに触っていたいんだ」  オレは嫌われてしまうかもしれない。  教授はオレとは違うから。  「触っているだろう」  教授は宥めるように肩を抱く。  「そんなのじゃなくて」  オレは赤い顔をしたまま、教授の腕を掴んで駐車場のトイレに入っていく。  誰もいないのをいいことに、トイレの個室に教授を連れ込む。  「・・・何を?」  育ちの良い教授にはまだ分からないし、こんな真似しやしないのもわかっている。  嫌われてしまうかもしれないのに、オレだってこんなことしたくない。  でも、この後教授がどうなるのかも分からない。死なないって信じているけど警察に捕まるかもしれないし、オレも死ぬつもりはないけど あの男に犯される位のことはありえるんだ。     だから、ちょっとでもいい。  触っていたい。  触られたい。  オレは教授のズボンのチャックを下ろした。  「な、」  教授が驚く。  この期に及んでもまだ教授はわかってない。  わからなくてもいい、もう。  オレは教授のそれを取り出し、床に跪いて咥えた。    愛しいそこを、懸命に舐める。  先端を攻め立て、唇で扱く。  立ち上がっていくのが嬉しかった。  嫌がっているのかもしれないけれど、感じてはくれている。  教授の顔は見れない。   軽蔑されているのかもしれないから。  でもいい、今はこの人に触れたい。  髪を撫でられた。  「君と言う人は・・・」  吐息混じりの声がした。  恐る恐る顔をあげると、教授がサングラスを外してポケットにいれていた。  服こそ似合っていないけれど、本当に教授はハンサムで。  黒い目が怖い位に黒くなっていて。    「もういい 。立ってくれるかい」  そう言われた。  オレは嫌われたのかと思った。  少し涙ぐみながら立ち上がると、教授はオレの身体を回し壁にオレをおしつけた。  教授に背中を向けたままオレは抑えこまれ、オレのズボンを下着ごと引き下ろされた。  性急に指が穴の中に入れられる。  呻いたけれど、一晩中入れられていたそこはまだ柔かだった。  「優しくはしてやれない」  君が悪い。  教授はオレに囁いた。     ローションの代わりだと、教授にまさかそこを舐められるとは思っていなかった。  嫌だと言っても、始めたのは君だと容赦なかった。  そんなことをされたことがないなんて言わない。でも、教授にそんなことをされるなんて耐えられない位恥ずかしかった。  自分で始めおいて、アレなんだけど、嫌がる教授に仕方なくされる位のつもりだったから、まさかこうなるとは。  この人が、野獣なのは分かっていたのに。  激しく突き上げられる。  声が思わずこぼれる。  口の中に指が入れられ、乱暴にかき回される。  その指さえ気持ちいい。  「声出したら駄目だろう」  興奮にかすれた声で教授が囁く。  「君が、悪いんだぞ、止めてやれない」  耳を噛まれ、首筋を噛まれる。  また突き上げられる。  すごくいい。  オレは声を殺し、快感に耐えるしかない。  突き上げは激しさを増した。  立ってられなくて、崩れ落ちても容赦なく、突き上げられた。  声を出せないことが快感を増大させた。  教授がオレの中でイキ、オレは中でもイき 、自分のモノでもイった。  すごく。  良かった。  頭が白くなるようで。  教授は困ったような顔をして、オレを抱き起こし、便座に座らせた。  「オレを軽蔑、する?」  オレは自分でしておいてなんだけど、泣きそうになった。  オレはビッチだけど、この人にそう思われたりそう扱われるのは嫌だ。      「私こそ、酷くしてしまって、嫌われるかと思った」  教授が笑った。  オレは安心した。  教授は宥めるようにオレを抱きしめた。  「分かってないな。君に嫌われることが怖いのは、私の方なんだよ」     教授は言うけど、オレが教授を嫌う理由がわからない。  教授は服を整えた。   オレのシャツも整えてくれた。  「少し休んでいきなさい。ここで別れよう」   教授はオレの唇にキスをした。  「最期がトイレなんてオレ嫌だからね」  オレの言葉に教授は笑った。  「私もだ。私には、ゆっくり時間をかけて君とベッドでしたいことがあるからね」  教授はいやらしい顔をした。   すごくセクシーで。   オレの中がキュッと締まった。  教授はサングラスをかけた。  「似合わない」  オレはため息をついた。  「今度オレが似合う服を選ぶから」  オレの言葉に教授は笑い、一人個室を出ていった。  どうしよう。  こんな時なのに。  好きすぎる。

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