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狂騒する夜の過ごし方3

 僕は病院を出る。  警察に色々聞かれてから、気分の不快を訴えて、病院に行ったのだ。  知り合いの家に今日は泊まると言ってある。  裏口からコッソリ出たので、マスコミもいない。  僕に付き従うように、あの人の身体を借りた悪鬼もついてくる。  中身はあちこちに飛び回っている。  まさか、馬鹿みたいな理由で身体を貸したことが役に立つとは。  妹が無事なのがわかった。  妹は殺人鬼の被害者で、今は彼の共犯者になっている少年と「友達」になったらしい。  殺人鬼の方は完全に溶け合ってしまっているようだ。  とり憑かれるというのは似たようなチャンネルを持っていることなので、元々その資質がその男にはあったということた。  取り憑かれなくても十分殺人鬼になり得たはず。  遊女に取り憑かれた  さんも遊女との共通のチャンネルがありすぎた。  頭脳明晰、性に奔放、本質的には真面目で一途。  共通項は多い。  悪鬼とこの人だけは、互いの意志の結果なので違う。  似ても似つかない。  「  さんの所にいるべきなんじゃない? 僕じゃなくて」  僕は言う。  「行きますよ。でも兄さんを守らないとこの身体貸してもらえないんで」  悪鬼は言った。  「僕はもう大丈夫だよ。  さんのが危ないよ、これから殺人鬼と会うらしいし」  僕もその場所が分かれば向かうつもりだ。  僕なら殺人鬼を殺せる。  その中身ごと。  僕はそうしないといけない。  そのため、僕は家から持ってきたモノをリュックにいれていた。  白い布で包まれた60センチほど ボロボロの鉄クズ。  握る柄がかろうじて残っているので昔は剣であったことはわかる。   僕のものだ、僕があの町から持ち出した唯一のもの。  「いや、おれの勘がね、兄さんに今はくっついておけって言ってるんだよね」  悪鬼か言った。  「ふうん」  僕は首を傾げた。  もう町は夕暮れに包まれていた。  教授の車に乗り込もうとした僕達の所へ、ものすごい勢いで車が突っ込んできた。  アクセルを踏みしめて僕を殺すために車を走らせる若い男の顔が見えた。  若い、まだ10代だろう、無表情な綺麗な顔の男。  男は迷いなく、僕達に向かって突っ込んできた。

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