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狂騒する夜の過ごし方4
男の子の指が飛んでいくのを、わたしは閉じこもったわたしの中から見ていた。
男は刀を抜いて、男の指を三本一瞬で切り落としてしまった。
男の子は悲鳴をあげた。
わたしもわたしの奥で悲鳴をあげた。
座ってぼんやり前を見ているだけにしか見えないだろうけど。
「大丈夫だ。お前に指なんかなくなったってオレは構わない」
男は泣いている男の子の唇に優しくキスする。
わたしに、ご飯をあげたことがバレてしまったのだ。
「この女の子と話したのか」
男はわたしの前に男の子を連れてきて詰問する。
わたしは安全な場所にわたしをかくしている。
人が見たらぼんやり椅子に座っているように見えると思う。
「少し」
男の子は答える。
嘘をついては駄目、とわたしは男の子に教えてある。
出来るだけ本当のことを答えるようにと。
「何について話した?」
男の声は静かで落ち着いていた。
「ストックホルムシンドローム。おれがあんたを好きなのはそのせいだって」
男の子は正直に答える。
「何だって」
男が固まった。
聞き返す。
「ストックホルムシンドローム」
男の子が繰り返す。
「違うその後」
男が無表情に繰り返す。
「おれがあんたを好き・・・」
男の子の顔が真っ赤になった。
男が笑った。
殺人鬼とは思えないような笑顔だった。
冷たく人を馬鹿にしているような顔が柔らかくなる。
「そうかオレが好きか」
男の子の頭を撫でて、キスをした。
でも、その後真顔になった。
「でも、この女の子と話してお前はおかしくなったんだよな。オレから離れようとした。お前はこの女の子と話 をしてはいけない。お前はオレから離れたらだめなんだ」
そして、男は刀を持ってきた。
「それをきっちり覚えておかないとな。だから、身体に教える。大丈夫。ちゃんと手当てしてやるから。お前、傷とかすぐに今治るだろ、だから大丈夫だから」
そして男は刀を抜いたのだった。
飛んでゆく指、悲鳴、血。
わたしはそれを見ていた。
男は悲鳴を上げる男の子を優しく抱きしめていた。
そして、男も男の子もそれを見た。
そして、わたしも。
少し経った頃、切れた指が、磁石でくっつくかのように男の子の手に戻りくっついていくのを。
男の子の指は元通りになっていた。
「これは・・・すごいな」
男もさすがに驚いていた。
男の子も驚いた。
わたしもわたしの中で驚いていた。
「どうやら、本当にオレ達人間じゃなくなったんだな」
男は楽しそうに笑った。
「これは面白い。どこまで大丈夫だと思う?」
男は男の子に尋ねる。
男の子は青ざめたままだ。
沢山殺したから、沢山の精を受けた悪いモノの力は強くなっているのだ。
わたしもまさかここまでだとは思わなかった。
その影響は男の精を受け続ける男の子にもある。
「お前、もう人間じゃないよ。お前にはオレしかいないんだ」
男が優しく男にキスを繰り返しながら囁く
男の子が震える。
しっかりして、自分の中に入るの
わたしは心の中で囁く。
「どこまで大丈夫なのか試してみようか」
淫らな口づけをした後で、男は言った
「腕を切り落としても、脚を切り落としても、くっつくかな」
男の人がわたしにもメッセージを送っているのはわかる。
男の子に近づくな。近づくと男の子をひどい目に合わすと。
「大丈夫。お前の手足がなくなろうが、オレにはお前が特別だから。お前を離さないから」
甘く囁かれる言葉が怖い。
男は男の子から離れ、また、刀をきらめかせた。
男の子の右手足が飛んだ、男の子は立っていられず、叫びながら倒れた。
床に倒れられまえに、男が優しく抱き留める。
まるでころびかけた恋人を助けるみたいに。
そして、また、飛んだ手足はゆっくりとくっついていった。
「面白いじゃないか」
男は笑った。
「手足だけじゃなくて、内臓だったらどうなる?目をえぐったら?」
男はクスクス笑った。
男の子が怯えた。
それが実行されることが分かっていたから。
「離れるなんて考えるのも許さない 。もしお前が死んでしまったら、オレはアイツを殺してからオレも死ぬから」
わたしはこの男の人が良くないことを考えていることはわかった。
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