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最後の夜の過ごし方1
男に呼び出されたのは神社だった。
ああ、そうだよな。
そう思った。
ここから始まったんだから。
オレは神社の杜で立っていた。
来るはずの男を待っていた。
あの人は来てくれるだろうか
オレの中の声が言う。
来ないよ。
君が待っている人は永遠に来ない。
彼だけは未練なく、この世を去っていったから。
悪鬼に聞いた話からはそういうことだ。
あの人に会いたい。
オレは御守りを捨てていた。
ここからは、オレの中の遊女も 、男の中の悪いモノも、男も。
全てが複雑に絡みあう。
テレビのおかげで、男の正体はわかった。
覚えていた。
オレがアソコを噛んでやったヤツだ。
まさか、こんな形で再会するとはね。
あの人は?あの人は?
オレの中の遊女。
この気持ちは知っている。
あの人を好きだった頃のオレだ。
本当にはオレには全く興味のなかったあの人を必死で追いかけていた頃のオレだ。
何でもした。
言われたら人通りのある道端で身体を繋ぎもしたし、どこででも咥えた。
少しの優しさが欲しかった。
恋心に理由なんかない。
あなたが好き。
それだけだ。
でも、どうにもならないこともある。
それも恋だ。
死んでしまったから終わらせなかったんだよな君は、恋を。
でも、生きてキチンと終わらせていたならば、違うものも見れただろうにね。
あの人はどこ。
「来ないよ。来るのは、ほら」
オレは言う。
悪霊だけだ。
刀を手にした男が立っていた。
「遅いよ」
オレは言った。
男は教授の娘を連れてきていた。
刀を首筋に当てられているが、ぼんやりと前を見ているだけだ。
心を閉ざして、自分を守っているのだ。
「久しぶり」
男はにこやかに笑った。
覚えてる。
自己中なセックスするヤツだ。
イマイチだったと記憶している。
3Pしたもう1人の男の子の方が良かったことも。
そうか、これであの男の子が殺された理由がわかった。
コイツに呼び出されたんだな。
「なんとか思い出せたよ」
オレは男のハンドルネームを言った。
乱交サークルでの通り名だ。
男はにっこりと笑った。
「そう正解」
男は言った。
男は刀を教授の娘に向けたまま、言った。
「じゃあ、まず、この前の続きから始めるか」
男はオレに言った。
「まずはしゃぶって貰おうか」
オレは黙って男に近づく。
ダメだ。
しっかり刃は教授の娘に向けられている。
コイツの言うことを聞いている間に隙が出来るか、教授か、あの子か、あの人の身体に入っている悪鬼が来るまでしのぐか。
とにかく、時間を稼ぐしかない。
「跪いて、オレのものを取り出して咥えろ。咥えたことあるから簡単だろ?」
男がオレに命じた。
オレは命令に従う。
チャックを下ろし、取り出す。
確かにオレはビッチだが、平気なワケじゃない。
オレはオレがしたくない時や、嫌なヤツとは絶対してこなかったからだ。
それに今は、教授以外とするのは嫌だ。
でも、時間を稼がないと。
オレはそれを震える指で持ち、咥えた。
その瞬間、男に喉の奥に突っ込まれた。
苦しい。
息が止まるかと思う程、喉の奥を突かれた。
えずく。
苦しい苦しい。
頭をつかんで揺さぶられる。
口の中を、喉の奥を蹂躙される。
涙と苦痛の声が零れる。
喉の奥に、精液が吐き出された。
「飲め」
男は命令した。
オレは仕方なく飲み込んだ。
吐き気がした。
やっと口の中から出されて、荒い呼吸を繰り返しす。
「やっぱりいいわ、お前」
男はオレの髪を掴んで顔を寄せた。
「オレの中のもんかお前だって言っている」
男は真っ黒な笑いを浮かべた。
そう、真っ黒な。
男の顔が変化していった。
男には顔がなかった。
ないと言うよりは、穴のような黒いものが顔を覆っていた。
鼻も目も口もない、真っ黒な穴が笑っていたのだ。
オレは凍りついた。
これは、何だ。
「オレの顔がどうした?」
オレの表情に気付いた男は自分の顔に手をやった。
男の手が穴の中に入っていく。
男は悲鳴をあげた。
男の顔面か穴になっていることに男も気がついたのだ。
男は肘まで穴の中にいれ、失った顔をさがしていた。
不思議なことに、頭の後ろに手が出ることはない。
これは、チャンスなんじゃないか。
オレは思った 。
刀の先は、あの子から離れていた。
「 !」
オレはあの子の名前を呼んだ。
それはあの子を引き戻す呪文。
あの子は一瞬で、自分の身体にもどり、走り出した。
それに気付いた、男が追おうとするのを、オレは足を掴んで止めた。
これでいい。
あの子は止まらず走りきる。
自分がいることが、オレの邪魔になることがわかっているからだ。
顔のない男は、オレに向かって怒りの声を、あげた。
刀を喉元に突きつけられる。
「お前をしつけなおす必要があるな」
聞いたことのない声がして、オレの中の遊女が恐怖感の声をあげた。
お父さん許して
オレは顔のない男の顔を見つめた。
真っ黒の穴。
多分、コイツが。
良くないモノなのだ。
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