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優しい夜の過ごし方2

 部屋の前に立っていたのは教授だった。  オレは動揺した。  「部屋に入れてくれないか」  その口調は拒否することを許さない、と言っていた。  オレは部屋に教授を入れる。  落ち着かない。  ちゃんと会うのは数ヶ月ぶりだし、電話もしてはいたけど、なんかそう、おざなりにしてた。    お茶したり、少し話したりはしていたけれど。  教授か 会おうとしてくれる度に、なんだかんだ言って会わないようにして。  とうとう、教授は怒ってしまったんだろう。  卒業して、秋に向こうの大学に留学するまで、後数ヶ月。  教授と過ごせる時間は限られているのはわかっているのに、会えなかった。  どうして 会えなかった。    教授は家に入ってから一言も口をきかない。  オレの部屋はワンルームで、ベッドの前に食事や勉強机を兼ねた床に座って使うローテーブルがあるわけで、嫌が上でも、ベッドを意識してしまうわけで。   どうしよう。  どうしよう。  オレはどうすればいいんだろう。   コーヒーを出してみたが、教授が飲む様子も見せず。  オレはもじもじと、テーブルの教授の前に座った。  「   」  教授が何か言った。  「え?」  オレは聞き返す 。  教授は立ち上がって、オレの隣に座った。  ドン  乱暴に床に押し倒された。   「ふざけるな、と言ったんだ」  教授が低く唸るように言った。     真っ黒な教授の目が、オレを見下ろしていた。  その目が怒りに満ちている。    教授の顔が目の前にあった。  凄く怒った教授の顔は、それでも凄くハンサムで 凄くセクシーで。  怒りに満ちた目が黒くて、その黒さが深くて。  吸い込まれるようで。  オレは怖いと思いながらも、目が離せなかった。  牙をむく野獣のように、教授は歯をオレの首筋に当てた。   噛まれると思った。  今度こそ本当に噛み千切られるかと思った。  教授の怒りは肌で感じられる程だった。    掴まれた肩に食い込む指の強さが、どれだけ怒っているのかを伝えてきた。  でも、歯はわずかに肌に触れただけで、離れた。  「そんなに、嫌か。私に抱かれるのが」  低い声で教授は言った。    凄くつらそうな声だった。   怒っている。  でも傷ついる。  オレは困った。  教授を傷つけるつもりなんて。  「違う、オレはオレは」   オレは上手く言えない。  「君が大変な目にあったのは理解している。触るなと言われれば待つ、したくないならしない。でも 、はぐらかせ続けられるのは嫌だ」  教授が怒鳴った。  オレに口づけようとして、苦しそうに離れる。   「君に触れたい。食い尽くしたい。私が怖いか?そうだろう。無茶苦茶にしてしまいたい、今だって」  教授の身体か震えていて耐えているのがわかる。  「でも、君が嫌なら耐えれる。耐えれるから、ごまかしたり、はぐらかしたりしないでくれ!!」  教授が泣きそうな顔になって。  オレはオレは。  「オレ、オレ、あの化け物としたんだよ?」  オレは言えなかったことを言う。  「嫌だったけど、スゴイ感じたんだよ?そんなオレとしたいと思う?」  オレは間違いないなく、あの化け物に犯されて、感じてしまった。  声を上げてよがった。  あれが苦痛だけの酷い記憶だけなら、こんなに苦しまなかったのに。  「こんなオレじゃあなたに似合わない」  オレは泣いていた。  オレの言葉に教授はぽかんとオレを見つめていた。  それから 、身体をオレから離し 困ったように頭を掻いた。  「君は、君は・・・」  そうつぶやいてから、ふわりと教授は笑った。  オレの涙を優しく指が拭う。  「君が言ったんだぞ、レイプされた位で嫌いになんかならないだろって。そのくせに」  優しく髪が撫でられる。  「でも、オレ、気持ちよかったんだ」  オレは泣きながら言う 。  「まあ、それに関しては私も辛いところはある。私は嫉妬深いしな、実のところ。全くもって平気ではない。でも、ああなってしまったのは私の助けが遅かったせいだし・・・」  教授は複雑な顔をして言った。  やっぱり、嫌なんだ。  オレ。    オレ。  オレは泣きじゃくる。  「そうやっていつも、自分で考えすぎて結論出す自分がどれだけ真面目なのか、君は本当に自分がわかってない」  教授はため息をつく。  「君は自分をビッチ呼ばわりして、そんな自分だから私とは合わないと思っているわけだ」  教授に問い正されてオレは頷く。     オレは化け物相手でも感じる、ビッチだ。  「では、私とまともにあわなかったこの数ヶ月、 誰かとセックスしたのか?」  教授の言葉に首をふる。  「誰とも」  凄くしたかったけれど、他の人とはしたくなかった。  この人のことばかり考えて、自分でしていた。  「君はビッチどころか、真面目なんだよ。本当に。私は正直、君より真面目な人は知らないよ」  教授はオレを抱きしめた。  「真面目すぎて、こんなに長いことお預けを食わされるなんて」  教授はオレの背中をなだめるように撫でた。  「オレ、オレ」  オレは泣く。  「そんなくだらない理由なら、私は我慢しないからな」  教授がオレの耳元で唸った。  「どれだけ、どれだけ、私が我慢したか」  目がぎらつく。  オレは、怯えた。でも、身体は貪られる期待に、反応していた。    「覚悟しろ」  オレの喉に、教授は獣のようにかぶりついた。  強く噛まれ、それはこれから始まることが、捕食者に貪られることてあることを示していた。  「喰ってしまいたい」  その呻き声は、オレが甘く食い尽くされることの始まりだった。  食い尽くしてやりたいと思う。  愛しい愛しいと思えば思うほど、食らいつくしたくなる。  噛み、その肌を味わう度に 、陶酔し溺れる自分がいる。  自分の中の猛獣めいた欲望に、彼が怯えてしまう怖さがあった。  普段の自分との違いは自覚している。  彼を抱くまでは、まるで獣のように彼を貪ることで彼に嫌われるかもしれないと恐れてもいた。  でも、肌を合わせてしまえば、もう止まらなくて。  しかもそんな私を彼が受け入れてくれたものだから余計に止まらない。  その細いうなじを、その肩を、喉を噛む。  その跡をそして舐めあげる。  久しぶりのそこに入れるためには丁寧に解さないとダメだとわかっていたが、とてもじゃないがそこまで私が我慢出来ないので、彼の口の中で一度射精することにした。  優しく、出来ない。  彼が欲しくて欲しくてたまらないから。  彼の口腔を私のもので蹂躙してしまう。  苦しそうにえずく彼を見ても、さらに興奮してしまう自分がいる。    愛している。  そう思えば思うほど、彼を貪りますつくしてしまいたい。  頭を押さえつけて、射精した時、苦しげな彼に感じたのは罪悪感と、だからこその快感と興奮。  彼は自分をビッチ呼ばわりするが、私の方がよっぽどダメだ。  彼に酷くしてしまって興奮してしまう私がいて。  それを受け入れてくれる彼がどれだけ愛しいか。  えずきながら私の精液すら飲んでくれた彼を抱きしめる。  可愛い  可愛い。    丹念に穴を解す。  「もういいから、もういいから」  泣きじゃくる彼の言葉は無視する。   正直、ここまでグズグズになる彼が見たくてたまらない。  「入れて、お願い、入れて」  泣いて懇願されるのがたまらなかった。  「私が欲しいか」     自分でも意地が悪いと思うが、本当のところ、中に入りたくてたまらないのは私の方なんだが。  彼に聞く。   「欲しい 、欲しくてたまらないから、お願い」  その言葉に笑顔になってしまうのは仕方ない。   彼の尻をあげさせ、背後から一気に貫いた。  彼は背中しならせ、入れられた衝撃だけで、達した。  私は彼の首筋を強く噛んだ。  私の。  私の。  「愛している」  そう告げた。  止まらなくなった。    「愛している」    そう叫びながら、獣のように彼を貪り続けた。   噛み、突き上げ、回し、また噛んだ。  獣が獲物を貪るように彼を貪った。  嫌われないかと、怖がっているのは、私の方だ、  こんな獣じみた私を受け入れてくれていることに感謝しているのは、私の方だ。  感じてくれているのかさえ、今は気遣ってやれない。  「愛している」  私は夢中になって彼を貪り続けた。 *

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