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優しい夜の過ごし方3
熱に焼かれる。
教授は熱くて。
指も舌も肌も、何もかもが熱くて。
オレは焼かれていた。
喘いでいるのか、叫んでいるのかさえわからない。
打ちつけられる衝撃に、身を任せる。
焼いてしまって、オレを。
この人だけが、オレを焼く。
初めての恋に、惨めにとりすがり、プライドも何もかなぐりすてて、道端でも身体を繋いだようなオレを焼く。
恋を無くして開き直って、ただただ、快感だけを追い続けたオレを焼く。
あの化け物にさえ感じてしまうようなオレを焼く。
名前を呼んで、助けを求めれば、口腔に熱が与えられて、さらに焼かれる。
焼かれたい。
焼いてしまって。
唸りをあげる獣に貪られる。
求められている。
こんなにも、求められている。
気持ちいい。
「愛している」
そう叫ばれて、オレも応える。
「愛し、てる、オレも 」
さらにオレは焼き尽くされた。
「頭が真っ白に、な、る」
オレは何度目かの絶頂の後、意識を飛ばしたのだと思う。
にも、関わらず、貪られつづけたのだと、思う。
目が覚めた時にはきれいにされた身体と、無数の噛み跡と、
ひたすら謝る教授がいた。
その日、目覚めてからも、教授はオレを離してくれなかった。
ヤりすぎたと謝ってはくれたけれど、数ヶ月も逃げたオレが悪いと開き直られた。
でも、もう貪られるようなことはなくむしろ、すごくいやらしく優しく扱われて。
それはそれで、良かったけど。
この数ヶ月どうやって自分でしていたのかを、させられたりまでしてしまった・・・。
この人は本当にドスケベだと思う。
その後、やっと話が出来た。
オレの心配していたことも説明してくれてた、
オレはあの化け物の精を受けてしまったので、オレもおかしくなるのかと怯えていたのだけど、あの子によると、それまでにあの子の精気を貰っていたのでそれで相殺されるのではないか、とのことだ。
まあ、今も身体中の教授の噛み跡が残っているところから、オレが不死身の化け物にはなっていないのは間違いない。
教授はオレの留学先の国に来ることになった。
「なぜ」
「君と離れるつもりはない」
断言されてしまった。
「君にだけは言っておくんだが」
と前置きされて、その国には今回や前回のような事件を調査している機関があるそうで、その国での仕事を探していた教授にオファーが来たらしい。
どうやら、こういった事件はオレ達が思っている以上に多いようだ。
それに二回も遭遇し、二回とも生還し終わりへと持っていった教授の手腕と、学者としての経歴が評価されたらしい。
大学でも、教えるけどね、と教授は笑った。
この人は本当に素晴らしい学者なのだ。
オレの尊敬する、学者だ。
「君にも手伝ってもらいたい」
教授はオレに言った。
もちろんだ。
その夜、教授は泊まって帰った。
料理を作ってくれて、二人で映画を借りてきて見たりした。
教授もオレと同じSFヲタクであることを知り、二人で盛り上がった。
オレは、セックスして帰る以外のつきあい方を知らなかったから、すごく楽しかった。
教授は少ししたそうだったけれど、もう動けないオレの明日以降のスケジュールのために勘弁してもらった。
ただ、抱き合いながら寝ることも、オレには初めてで。
オレはこっそり泣いてしまった。
こんな夜がオレにもあるなんて。
教授がオレの背中をなでる。
優しい夜。
優しい夜。
朝が来なければいいと思うことがあるなんて。
オレは優しい夜の過ごし方を知った。
そして、こんな夜はまたやってくるんだってことが幸せだった。
END
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