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オマケ あの子とあの人

 あの人からの電話だ。  僕は慌てて自分の部屋に行き、鍵を締める。  妹は部屋でゲームに夢中だし、しばらくは大丈夫。  僕のプライバシーのために僕の部屋には鍵をつけてもらった。  いや、だって、色々僕にだって事情が。  その事情の一つがこの電話だ。  「もしもし」  僕は電話に出る。  「部屋の鍵はかけたのか?」   あの人がからかうように言う。  僕は真っ赤になる。  「抱きたい」  あの人が囁く。  耳元で囁かれてるみたいで身体がふるえた。  僕はベッドに横たわる。  「乳首だけでイかしてやりたい。そこだけで泣かせてやりたい」  僕の指が、シャツの下を這い、乳首に触れる。  撫でるように動かす。  「上手に一人でイけるようになったか?」  あの人にその行為を見透かされるように囁かれ、赤くなる。  「いじってるんだろう、もっと弄れよ、声を聞かせろ」  あの人の声。  熱に浮かされたように指を胸で動かす。  あの人が触れたように、あの人の指を思い出しながら、撫でさすれば、声が零れた。  はぁ  「強くしてみろ、お前は痛い位が好きだろう」  強く押しつぶし、回す。  あの人にされてる、あの人の指がここに触れ てる。  「あ、嫌・・・」  思わず声が出てしまう。  「嫌って、自分でやってるんだろ」  あの人が笑う。  僕はどうしても、嫌とダメって言う言葉を使ってしまう。  でも、強要されて教えられたセックスなんだから仕方ないと思う。  つまり、あの人のせいじゃないか。  「そのまま強く挟み続けろ」  僕は言われた通りにする。  あの人だ。あの人だ。  僕の指ではあの人にくらべたら拙いのだけど、それでも電話ごしのあの人の声だけを聞けば、イける気がするし、だんだん気持ちよくなってきた。  「ダメ、嫌・・・」  僕は喘ぐ。  立ち上がっていた  触りたいけれど、僕は前だけではイケない。  そういう身体にされてしまったのだ。  この人に。  イくにはこのまま胸でイくか、後ろを弄ってイくしかない。  僕一人では無理で、僕はあの人の声がなければ、もう一人ではイけない身体にされてしまっている。  「俺が舐めているところを考えろ、ほら、乳首を噛んでやる、甘く噛まれるのが好きだろ」  そう言われながら指でつまめば、身体中が震えた。   「軽く吸われるのも好きだよな」   その声を聞きながら親指で乳首を回せば、声が漏れる。  妹がいる、我慢しなきゃ。   「エロい。お前本当にエロい。抱きたい。俺だって立てるんだぜ」  興奮にかすれた声。   僕はその声に酔う。  言われるがままに乳首を弄り続けた。    あの人の声が乳首をなめる。  あの人の声が乳首を噛む。  あの人の声が乳首を吸う。    僕はあの人の声と自分の指先だけで、何度も身体をふるわせる。  気持ちよかった。  でも・・・イけない。  これだけでは無理なんだ・・・  もう立ち上がり、ダラダラと零れているのに、まだ僕はイけない。   泣きそうになる。  「お願い」  僕はせがむ。   あの人は笑った。  悪い笑い方だ。  「お願いィ」  僕は泣きながら言う。  もう辛すぎた  「イけよ」  男に言われた瞬間、僕はやっと解放された。  声を殺して射精した。  身体が痙攣するのを止められない・・・。  こんな身体にされてしまった。  もう、射精すらコントロールされていて。  「可愛いな、お前、本当に可愛い」  電話の向こうの声が恨めしい。  この数ヶ月、指しか入れていない、後ろの穴がうずくのも、この人のせいだ。   恥ずかしくて、もう、憎たらしくて、会いたい。    「ねぇ」  次のセックスの指示が出る前に僕は言う。  「どうした?」  あの人は真面目に聞く。   頑張ってセックス以外のことをしようとしている努力はかいたい。  「僕の代わりをしてくれてありがとう」  ずっと言わないといけなかった。  僕の腕を掴み、あの男の子を殺したのはこの人だった。  もう、彼は助からなかった。  人間として殺してやる以外、どうしようもなかった。  でも、僕は妹に憎まれたくなくて。  この人は、僕の代わりに憎まれることを選んでくれた。  僕の罪を被ってくれた。  「お前、何人殺した?」  あの人が尋ねる。  「百人以上かな」  僕は答える。  殺人鬼など可愛いものだ。  僕は自由になるために、神の中で生きていた僕と同じ犠牲者だった人達を殺した。僕が助かる為に。  そのこともこの人は知っていて、僕を抱く。  この人も一人殺している。  僕の為に。  そして、また一人。  僕の為に。  僕にそこまでの価値はないと言っても、この人はそうするんだろう。  「一人くらい殺したやつが増えてもお前の痛みには及ばない。気にするな」  この人は言う。  いつだってそうしてくれるんだろう。  「どうせお前の妹には俺は嫌われてるし」  あの人は全部わかっていてそういう言い方をする。  今回も、全て自分が引き受けてくれた。  「愛している」  突然、ぶっきらぼうにあの人が言った。  「知ってる」   僕は答える。  でも、いつか 、いつか、いつか。  「あなたを愛したい、そう思っているんだ。今はそれでもいい?」   僕の言葉に電話の向こうであの人が言葉を失う。  あの人の「愛している」に、僕はずっと応えてあげれなかったから。    電話の向こうで嗚咽の声が聞こえた気がした。  「もしかしたら、泣いてるの?」  僕は尋ねる。  「うるさい」  あの人は否定しなかった。  「明日会いにいく。絶対に行くからな」    こちらの返答も待たずに電話がきられた。  いつも、勝手だ。  あ、海外に家族で住む話をしてなかった。  明日切り出したなら、僕はどんな目に合わされるのだろうか。   僕は本気で怯えた。  でも、わかっている。  どうせ、あの人は僕についてくるんだ。  あの人は僕から離れない。  僕ももう、それでいいと思っているんだ。                    END

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