ベンチに座る倫平の隣に腰を下ろした眞央は倫平の悩みに耳を傾けることにした。 「とにかく、面倒なんです、恋愛が・・・」と、倫平はハァーとため息。 「だから、ホント長続きしなくて・・・」 「・・・・・」 「なんで、あんな束縛する必要があるんですかね・・・焼きもちなんかもすごいし・・・」 眞央は「フフッ」と、笑うと、「学生みたいな悩みだな・・・」と、口にした。 「ですよね・・・だから、周りにもあまり相談が出来なくて。 したらしたで、『早く大人になれよ。上手く立ち回れよ』って。 上手く立ち回れないお前が悪いんだって最低呼ばわりされるんですよ・・・」 「・・・じゃあ、初めから付き合わなきゃ良いんじゃないか？」 「・・・・・」 「ひとりでいるのも悪くないぞ」と、眞央は自虐的に笑ってみせた。 倫平は眞央の顔を意味ありげに見る。 「？」と、眞央。 「でも、男の下半身って、そういうわけにはいかないじゃないですか？」 「えっ、あっ、お前、それは最低だわっ。 そんな奴だったの？！ 見た目と全然違うんだけど！？」 「見た目ってなんですか？」 「いや、爽やかな風をいっつもビュービュー浴びて出来た顔ですみたいな新人男性アナウンサーみたいな顔をしているのに、ヤリ目でしか女と付き合わないなんて」 「それは誤解ですよっ！ ヤリ目じゃないですよ。 最初はきちんと『あ、この娘とならうまく愛せ合えるかも』って気持ちでちゃんとお付き合いを始めてますよ。 でも、最終的には『私のことは本当に好きなの？』とか『私のことをどう思ってるの？』とか言われちゃうんですよ。 でも、好きだから付き合ってるわけじゃないですか？」 「・・・・・」 「今の娘ともそんな感じで。 なんか、付き合うのも面倒になってきたけど、別れ話切り出すのも面倒くさいなって・・・」 「今、最低な愚痴を零したの自覚出来てるか？ それじゃあ、周りから最低呼ばわりされても仕方ないよ」 「やっぱり、俺は最低な男なんですかね・・・」 「でも、なんで、男同士の恋愛なんか聞く必要があるんだよ？」 「ああ。 大学生の時にふと思ったことがあったんですよ。 女って面倒くさいな、男友達といる方がずいぶん気が楽だなって。 じゃあ、男とセックス出来れば問題解消するんじゃねえ？って」 「お前、思考が最低だな。 結局、ヤれるならなんでも良いのかよ」と、眞央は可笑しさを堪えることが出来ず、「ハハハっ」と笑い出した。 「でも、男って、そこで出来てると思いませんか？」 「思う、思う。 いいわ〜、お前の考え方は分かりやすくて、オレは好きだわ」と、笑顔で口にした眞央。 倫平はその眞央の笑顔を見て少しドキっとした。 「まあ、オレも人のことを最低なんて笑える立場じゃないんだけど」 「・・・・・」 「なんか、すごい気が楽になったわ。 お前のそんな話が聞けて」 「・・・・・」 「オレも超が付くくらい最低な人間だからな。 そこの部分に関しては」 「・・・・・」 「だから、この前みたいな大恥をかくことをしたんだし」 「・・・・・」 「だから、絶対オレみたいにはなるなよ。 好きだって言ってくれる人は大切にしてやれ。 じゃないと、しっぺ返しが来るぞ」と、優しく微笑む眞央。 倫平はまたその眞央の顔にドキっとした。 「じゃあ、先に戻るから。 もう少し休憩してろ」 「ありがとうございます」 倫平がそう言うと、眞央は軽く右手を挙げて、ショップに戻っていた。 倫平は眞央から返してもらったタバコの紙箱とライターを見た。 タバコの紙箱はまだ封の切られてない新品に変わっている。 倫平はこういう気遣いをする店長がやっぱり自分は好きだなと思った。