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ちょうどその頃、倫平は東京行きの新幹線に乗車していた。 いつも乗車時間は、スマホで配信動画を観ていたり、オークションで売り買いする中古自動車の資料を読み込んだりしているのだが、今日ばかりは何もする気が起きなかった。 何をしていても、倫平の脳裏に眞央と過ごした刺激的な夜がふと蘇って来て、目で追う肝心な内容がいつの間にか頭に入ってこなくなるからだ。 倫平もまた眞央と同じように、眞央と過ごした夜を思い返していた。 《正直、悪くなかった。  もっと、嫌悪感に襲われると思っていた》 倫平は淫らな眞央の夜の顔を思い出す。 《店長を初めて見た印象は綺麗な人だなって思った。  もっと言えば、とても清潔感が漂う人。  いつも皴一つないスーツをビシッと着こなしていて、髪もキレイにセットしてあって、ヒゲも永久脱毛してるのか?と思うくらい毛穴が見えなくて、勿論肌も透き通っている。  常に良い香りがする香水なんかも漂わせていて、どんなときだって抜け目がない完璧な見た目を保持している。  仕事に対しても同じで、部下に威圧的な態度をとるわけでもなく、いつも親しみやすくて接しやすくて、洗車などのイヤな仕事は率先してやるタイプで出来過ぎた上司だなとも思っている。  だから、おとといの夜、店長のある意味で本当の姿を見て、自分でも驚くくらい興奮してしまったのだと思う。  あの、いつも完璧で清潔感の塊の店長があんなにエッチになって、オレの手で快楽に流されまくるなんて・・・!》 倫平もまた、あの夜を思い出すと自分の股間が熱くなっていた。 《店長がゲイだと知ったとき、驚きというよりかは、「なるほどな」と、妙に納得する方が強かった。  あの店長があんな騒動を起こしたこと自体に驚きは隠せなかったが、店長はずっと『彼女が出来ない、結婚には興味がない』と、口にしていた。  が、店長がいくらそのつもりでも、女の方が放っておくわけがないと思っていた。  店長みたいな優良物件は普通の女なら、なんとしてでもハントしたいはずだ。  だから、ずっと独り身でいるのが不思議でならなかった》 「いきなり尻突き出してあんなボーズ見せるし・・・しかも『許して・・・』って・・・。 あれは卑怯だわ・・・店長、魔性かよ・・・」 倫平は印象に残った夜の眞央の顔を思い出して呟いた。 《チャンスがあれば、一度、男とセックスをしてみたいと本気で思っていた。  理由は簡単だ。  どんなもなのか知っておきたかった。  俺はもっと気楽な付き合いがしたい。  『こうだから、こうでしょう?』と、文句を言われるような、公式に当てはまらなきゃ許されないような付き合いはしたくない。  人生も同じように考えている。  ルールに当てはめられなきゃいけない生き方があまり好きじゃない。  俺は俺なんだ。  そういう生き方がしたいし、相手にもそれを理解して欲しいと思う。  そんな思いからなのか、男とセックスが出来れば、自分がもっと楽に生きれるんじゃないかという気がしていた。  自分は何者にも縛られないで生きていける、型にはまらずに生きていける、そんな感じがしていた。  もし、店長とセックスが出来れば新たな自由が手に入る、  もし出来なければ、これからと同様、何かに縛られたような、ずっとどこかで息苦しさを覚えるような生き方をして行くことになる。  そう思っていた。  だから、勇気を出して店長を誘ってみた。  だけど、店長と快楽におぼれたあの一夜は、自分の欲しかった答えとは全く違う何かを見つけてしまった気がする。  それが何なのか分からないから、ずっとモヤモヤしている。  おとといの夜の出来事を何度も思い出してしまうのはそのせいなんだろうか・・・?》 「しかし、店長は名器だったな・・・男殺しアナルの地獄・・・売れないAVのタイトルかよっ」と、ひとりで自分のつまらないボケに突っ込みを入れた倫平は、ハァーと大きく重いため息をついた。  

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