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『BSC』の星ノ空支店は中古自動車の売買を取り扱う性質上、広大な駐車場を所有している。
なので、従業員全員の車通勤も可能としている。
勿論、眞央と倫平も車通勤だ。
その為、飲酒することが出来ないふたりは、街で評判の大衆食堂で夕食を共にすることにした。
「やっぱり最低だな、お前」
眞央はどこか不機嫌な口調で口にする。
「人は最低な生き物だからこそ、間違いを犯すんですよ。
間違いを犯さなくなったら、それはもう神様ですからっ」と、こちらもどこか不機嫌な口調で応戦する倫平。
「折角の東京出張ですよ、行くでしょ、風俗」
「・・・・・」
「店長は行ったりしないんですか?」
「・・・・・」
だし巻き定食のだし巻き玉子を口の中でもぐもぐさせて暗に黙り込む眞央。
「行くんじゃないですかっ!」と、倫平は眞央の図星を見抜く。
「風俗には行きませんっ。
マッチング系のアプリをやるだけですーっ!」
「結局、ヤリ目目当てでしてるんでしょっ。
同じようなもんじゃないですかっ」
言い返せない眞央は少しムクれた。
「で、なんで、オレをまた食事に誘ったの?」と、眞央。
「・・・・・」
「本当にオレにハマったか?」と、ぶっきら棒に言う眞央。
「・・・・・」
倫平は箸を置くと、声を潜めた。
「男とやってみたんですよ」
「・・・・・」
食べる動きが完全停止した眞央。
「ウリセン??って言うんですか?
ゲイ向けの風俗なんかあるんですね」
「・・・・・」
「なんです?」
「いや、オレ、ウリセンの子とは経験ないから」
「そうなんですか?!」
「すごい度胸だね、お前。
ついこの前までノンケだったのに。
てか、顔に似合わずやっぱりスケベだよな」
「それが・・・全然勃たなくて・・・」
「・・・・・」
「大損しましたよ。
ちゃんと可愛い男の子を指名してみたんだけどな・・・」
「・・・・・」
「それで、次の日にデリヘルの女の子を呼んでみたんですけどね・・・なんかこう自分の中でイマイチ盛り上がらなくて・・・その娘も途中で帰ってもらいました」
「なにそれ?」
「ありません、そういうの?」
思い当たる節がない眞央は首を傾げた。
「あ、なんか違うんだよ、そうじゃないんだよ、こうなんだよ、俺が求めてるのはこうなんだよ、みたいな思いが常に頭を支配していて、心のチンコがフル勃起しない感じ」
「心のチンコってなんだよ?」
「知らないんですか?!
心のチンコは女子にもあるんですよ」
「知らねえよっ!
てか、初めて聞いたよ、女子にも心のチンコがあるって」
「・・・なんて言うですかね、こういうの・・・?
体の相性、みたいなものなんですかね・・・」
「・・・・・」
「そう言えば、店長と過ごしたあの夜。
俺の心のチンコはフル勃起でフルスロットルでした・・・」
「・・・・・」
眞央は冷めた目で倫平をじっと見つめた。
「どうかしました?」
「スケベのお前に言われてもな・・・悲しさしか残らんわ」
「ええーっ、酷いっ。
嬉しくないですか!?
褒めてるんですよ・・・」と、倫平はふて腐れた。
「店長はどうだったんですか?
朝、目が覚めたら、何にも言わず勝手に帰っちゃってるし」と、口を尖らせた。
「・・・・・」
眞央も体の相性は確実に良かったと思っているが、そのことだけは悟られたくないと思い、今度は澄ました表情を作った。
倫平は眞央を力強く見つめた。
「・・・もう一回だけダメですか?」
「・・・・・」
眞央の胸がキュンとした。
どうやら、倫平の顔は好みではないが、倫平が見つめてくる顔は好みらしい。
「あの条件はちゃんと守るんで」
「・・・・・」
「セクハラだと訴えない。
ショップでは部下と上司の関係を守る。
プライベートの俺達はあくまでもセックスを楽しむだけの関係」
「・・・・・」
見つめ合うふたり。
眞央が呆れたように口にする。
「・・・軽いなー、お前」
「酷いな、今は性の迷い子と呼んでください」
「そんな発言が許されるのは高校生までだぞ」
「・・・ダメですか?」
「・・・・・」
眞央は倫平を見つめて、じっと考え込んだ。
「・・・じゃあ、更に条件追加なら」
「?」
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