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客からの電話に対応している女子事務員が営業職の社員らのデスクに向かって声を掛けた。
「すみませーん。
今から、どなたか訪問の買取査定に伺える方いませんか?」
「急ぎ?」と、返答する眞央。
「みたいです」
「じゃあ、オレが行くわ。
こっちに電話回して」と、眞央。
眞央は訪問で買取する客への対応用件を電話で一通り済ませると出かける支度を始めた。
その様子をデスクで見守っていた倫平が眞央に駆け寄って声を掛ける。
「店長、俺も一緒に行きますよ」
「いいよ。
他の奴誘うから」
「・・・・・」
倫平は確信した。
やっぱり、自分を避けているのだと。
「手が空いてるの、今、俺しかいないですよ。
ねえ、木下さん」と、倫平は目の前のデスクで仕事している木下に問いかける。
「そうだな・・・みんな、今、手一杯ですね」と、木下は眞央に向かって告げた。
「・・・・・」
眞央は少し考え込んだ。
「・・・いいよ、ひとりで。
京和も他に仕事があるだろう?」と、眞央は今日初めて倫平の顔を真っ直ぐに見て、そう口にした。
倫平はそれがとても不愉快で仕方なかった。
どうしようもない怒りに支配されそうになった。
仕事に関しての発言だと分かっているが、今日やっと目を見て交わした言葉が❝自分を拒絶する❞言葉だったからだ。
「どうしてですか?
急ぎの案件なんですよね?
もし、その場でこっちの言い値で買い取れることになったらどうするんですか?
誰か、一緒に行っておかないと、そのお客様の車を持ち帰ってくることが出来ませんよ?」
「・・・・・」
「持ち帰るの断ったら、他の査定ショップの店員をすぐ次に呼ばれちゃう可能性もありますよ?」
「・・・・・」
「店長のくせして、儲けをみすみす見逃すようなそんな判断ミスして良いんですか?」
「・・・・・」
「おい、京和。
店長に対して、ちょっと言い過ぎだろう」と、会話が聞こえた木下が倫平に注意を促す。
木下に注意をされても、倫平はケンカ腰の表情で眞央を見る目をやめない。
眞央は倫平の様子が少しおかしいことに気がついた。
「分かった。
一緒に頼むよ」
眞央は倫平を従えて行くことにした。
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