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買取した製造年代の古い中古自動車を海外に輸出販売する為、それらの車の取引業者先に倫平は打ち合わせで訪れた。
打ち合わせを終えると、ちょうど時間が夕方の帰宅ラッシュの時間と重なってしまい、倫平は帰社する途中でその渋滞の波に巻き込まれていた。
なかなか前に進まない渋滞する自動車の列に向かって、「ハアー」と、かなり重いため息をつく。
《何もやる気が起きない・・・。
仕事のやる気も出ない・・・。
次のセフレなんて見つける気もしない・・・》
「生きてるのってこんなつまんなかったっけ・・・?」と、洩らした。
信号が赤から青に変わった。
停車していた自動車の列が少し前進する。
が、すぐに信号は赤に変わる。
倫平は赤を点灯する信号機をじっと眺めた。
《あの信号が青に変われば、俺は今すぐどこに行きたいだろう?
このどうしようもない気持ちもやる気の出ない仕事も何もかも今すぐ全部放りだして好きにして良いよって神様に言われたら、俺は何がしたいだろう?》
答えはすぐに浮かんだ。
眞央の顔だった。
眞央と以前のように会いたかった。
眞央を思いっきり抱きしめたかった。
でも、倫平にはその選択肢はもう残されていない。
それに気づくと、倫平の心は深い闇に落とされたような感覚に落ちて行った。
※ ※
ようやく渋滞が解消し、倫平が『BSC』星ノ空支店に戻ってくると、ショップの閉店時間をとっくに回っていた。
倫平が従業員専用の駐車場に車を停車させた。
車から降りると、何台か少し離れた駐車スペースに見慣れない高級車が一台停車されてある。
その高級車は室内灯が点灯されているせいで、ひと目で誰がその高級車に乗りこんでいるのか見分けることが出来た。
運転席には少し白髪交じりの年齢にしては非常にスタイルも顔も服装のセンスも全てが整っている紳士がいる。
そして、助手席には眞央の姿。
倫平は思わずふたりの様子をじっと眺めてしまった。
眞央が何度も頷きながら、時折笑顔を見せて、紳士の話を聞き入っている。
運転席に座る紳士は、常に眞央に優しい笑みを浮かべながら、時折、眞央の肩を気安く揉んで話しかけている。
倫平は苦々しく見つめた。
倫平の目からは、よりを戻した不倫相手の紳士が一方的に眞央のご機嫌取りをしているようにしか映らなかった。
そして、それに対して、嬉しそうに笑顔を浮かべる眞央にとてつもない怒りを感じた。
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