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「本当は女房も一緒に連れてきて謝らせようとしたんですが、あんなことをしでかしておいて、恥ずかしくて、あなたに合す顔がないなんて甘えたこと言い出しまして。
でも、本当に女房も大変反省しておりますので、どうかお許しください」
「はあ・・・」
「あの、謝罪が大変遅くなって申し訳ないのですが、良かったら、これ。
お詫びの少しばかりの気持ちです」と、中年男性は紙袋に入った詫びの品《高級羊羹》を眞央に手渡した。
「ああ、どうも・・・」
「それでは、私、これから仕事がありますので。
こんな朝早くから大変失礼しました」と、また深く頭を下げて、中年男性は去ろうとした。
が、倫平が「すみません」と、声を掛けた。
「はい」
「あの、ウチの夏凪店長とは今日が本当に初対面なんですか?」
中年男性はおかしな質問をされたなと思いながらも素直に答えた。
「はい、初めましてです。
怖い人ならどうしようってずっと思ってました。
でも、良かったです。
とっても温厚そうな方だったので」
「・・・・・」
「ウチの女房もバカですよ。
こんな見るからに誠実そうな方が不倫なんかするわけないじゃないですかね。
嘘もつけないような顔をしていらっしゃる」
最後の言葉がグサリと眞央の胸に突き刺さる。
「それでは失礼いたします」と、ふたりに再び頭を下げて、中年男性は去っていった。
「嘘もつけないような顔をしていっらしゃる・・・」
「・・・・・」
倫平が嫌味ぽく口にする。
眞央は黙り込むしかなかった。
「・・・どういうことですかっ!」と、怒鳴る倫平。
「えっと・・・」
「元々、不倫なんかしてなかったってことですか?!」
「・・・・・」
「あっ、もう全然話が分かんないっ!
どこからが本当の話なんですかっ!
・・・そもそも店長はゲイなんですか!」
「うん、そもそもゲイっ!」
「じゃあ、不倫は?」
「・・・どうやら・・・してなかった、みたい・・・だね・・・」
「思い当たる節があるような言いかたはするんですね・・・」
「・・・・・」
「ひょっとして、元いたセフレに既婚者がいたってところですか・・・?」
「・・・・・」
倫平の追究しようとする眼差しから眞央は目を逸らした。
倫平は脱力したように肩を落とした。
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