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「あんたって人は・・・もうっ!」
そう言うなり、倫平はいきなり右手で眞央の左手首をギュッと掴むと、眞央を連れて、ショップに向かって歩き出した。
「あの・・・ほら・・・こんなことより・・・俺を早く呼び出した大事な話があるんだろう・・・」と、眞央。
「これ以上に大事な話なんてあるんですかっ!」
「・・・・・」
こんな場面なのに、自分が嘘をついたことで倫平を怒らせているのに、倫平の怒った口調がどこか懐かしく感じて、眞央はついた嘘をどう取り繕うかよりも嬉しさの方が込み上げてしまった。
倫平は眞央を連れたまま、ショップの裏口に向かった。
そして、喫煙所に眞央を連れてくると、ベンチに眞央を座らせた。
倫平は自分の気持ちを落ち着かせるように大きく息をハァーと吐くと、ベンチの背に手をドーンッ!と突いて、眞央を囲い込むとじっと見つめた。
「どういうことか分かるように説明してくれますよね?」と、倫平。
「・・・・・」
「ちゃんと説明してくれるまで、ここから帰しませんよ」
「・・・・・」
「なんで、昨日、俺が不倫相手とよりを戻したって勘違いしてるのにちゃんとそのことを説明してくれなかったんですか!」
「・・・・・」
「見てましたよね?
俺・・・泣きながら、愛の告白したんですよっ!
なのに・・・っ!」
と、ハァーと倫平は怒りを抑えるようにまた大きく息を吐く。
「俺が怖がらせたからですか?」
「・・・・・」
「不倫してないなら、よりを戻した相手じゃないんなら、昨日、ウチのショップの駐車場にいた、あの高級車に乗って現れたイケおやじは誰なんですか!」
倫平は真っ直ぐに眞央の瞳を見て、問いかけた。
眞央は渋々口を開いた。
「・・・あの人は・・・『U&Dカーズ』の専務・・・」
「・・・ウチのライバル会社じゃないですか?!
なんで、そんな人と会う必要があるんですか?」
「近々、隣の市に新しいショップを作るんで、そこの店長として来ないかって」
「引き抜きにあってるんですか?」
「ああ・・・」
「だったら、そう話してくださいよっ。
なんで、あの人とよりを戻したなんて嘘ついたんですかっ!」
「・・・・・」
その問いに眞央はまた目を逸らした。
その態度にカチンっと来た倫平は鞄から退職届と書かれた封筒を取り出すと、眞央に見せた。
「俺、ここを辞めるつもりなんで、今更何やらかしても平気なんで。
ちゃんと本当のことを話してくれるまで、ここから解放しませんよ」
「・・・・・」
「どうして、俺が不倫相手とよりを戻したって勘違いしてるのに、そのまま俺に嘘をつく必要があったんですか?」
「・・・・・」
「俺の何が気に入らないんですか?」
「・・・・・」
「言われれば、ちゃんと気を付けますから」
「・・・・・」
倫平がじっと見つめてくる。
自分はやはり倫平のこの顔に弱いと再確認した。
眞央は観念した。
「・・・お前のことが・・・」
「俺のことが・・・?」
「・・・好きになったから・・・です・・・」
「・・・はい!?」と、倫平は間の抜けた声を上げる。
「・・・いや、意味が全然分からないっ!
聞いてましたよね?
俺、昨日、泣きながら、眞央のことが好きだって言ったんですよ?
26にもなった大の男が・・・泣きながらですよっ!
それを見てて、なんとも思わなかったんですか!」
「思った・・・申し訳ないなって・・・」
「なのに、断ったんですか!
俺のことが好きなのに断ったんですか!」
「うん・・・」
「信じられない・・・この人・・・」
「・・・だって、お前、ノンケじゃん!」
「はあ?」
「お前、いつか、女に戻るだろうっ!」
「へ?」
「女に戻って結婚するんだろうっ!
それが社会の常識だろうっ!
捨てられるのは絶対、オレの方じゃんっ!
お前、絶対、最後には女選ぶだろう!」
「眞央・・・」
眞央は目に涙が溢れてる。
「お前、絶対、オレのことを最後には捨てるだろう・・・っ!」
倫平は眞央の腕を引っ張ってベンチから立ち上がらせると、ギュッと強く抱きしめた。
「!」
「俺が昨日、なんて言ったか全然聞いてなかったんですかっ!」
「・・・・・」
「他の誰かじゃダメなんですって、ちゃんと伝えたでしょうっ」
「・・・・・」
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