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第3話

 大門毅が高校生だったのは今から10年前のことだった。心臓の病を患い、自分と年が1つ上の同級生である高屋光貴に淡い思いを抱いていた彼はその後、通っていた高校と同じ名前のついた大学へ進学した。そして、その大学を卒業してからは 「昔から似てる、似てると思ってたが、年々、カドさんに似てくるもんだ」  そんなことを言いながら、大門の勤務する交番へ入ってくるのは大門自身も幼い頃に何度か、会ったことがある警部の厳原だった。 「厳原(いづはら)さん、お疲れ様です」  大門が厳原に頭を下げると、厳原はその名前の通り、厳しく見える眉間を緩めて見せる。 「もうカドさんが逝ってから2年か……」 「はい」 「確か、すい臓の癌だったか?」 「はい」  大門の父は今の厳原と同じく警部という立場で、若い頃の彼らは公私を問わず、よく行動を共にしていたらしい。  その父が亡くなったのは厳原の言葉の通り、2年前のことで、癌が発見された時には、既に全身が癌に蝕まれていたのだった。 「あの奥さんと別れてだったか、それまでは何でも嗜む程度にする人だったが……」  厳原の口にした『奥さん』というのは勿論、大門の母親で、大門が中学校へ上がる頃に家を出ていってしまった。容姿も性格も父親やその子供にあたる大門とは違い、繊細な感じがする女性だった。 「いつも笑顔で、別嬪さんで。一見すると、大人しそうだけど、芯が強そうで。何というか、癒し系の大和撫子って感じだったな」 「まぁ……」  実は、両親の離婚の際にはどちらと生活をしても良いと言われた大門だったが、当時はまだ少年だった大門自身もそんな母親へ接し方が分からなくて、警察官だった父と生家に残った。厳原の評した通り、彼女はとても美しかったし、笑顔を絶やしてはいないで、そうでなかった時も子供である大門も1度を除いてはなかった。 「しかも、あんなに仲が良さそうで」  厳原はそこまで言葉にすると、バツの悪そうな顔をした。 「すまない。色々と昔話が過ぎたな」 「いえ」  それから、厳原は大門と何言か、交わした。厳原が大門のいる交番へやって来たのはこれから、仲間の警部や懇意にしている若い警察官と何人かで飲みに行くので、大門も来ないかというものだった。

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