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第4話

「何で断っちゃったんですか?」  厳原と入れ替わるように巡回から帰ってきた大門の後輩である警察官の細田(ほそだ)は大きな声を出す。彼は刑事巡査。いわゆる、刑事になりたくて、警察官になったクチだった。 「まぁ、今日は予定もあったし」 「それにしたって勿体ないですよ! 先輩だっていつかは刑事になって、あの大門警部のようになるって思ってるんですよね?」 「いや、それは分からないな」  このやや興奮気味の細田に対して、大門の言葉や態度は冷静なものだった。  確かに細田の言うように大門の父はこの小さな交番の出で、ノンキャリアの警官としては警部まで登りつめた程、優秀な人物だったらしい。  それに、大門を買っている警部の厳原を始め、警察内部では大門を刑事巡査へというのはかなり信憑性の高い話だった。無論、それは大門の父が優秀な警部だったという点によってだけではない。 「柔剣道四段を所持していて、警察学校をその年のトップクラスの成績で出ている。ちょっと朴念仁だが、さっぱりとした男前。その割には意外と性格の方は穏やかで、真面目な好青年」 「あ、広部さん!」  大門と細田はお疲れ様です、とこの交番の責任者で、大門達の上司でもある広部部長に頭を下げた。 「お疲れさん」  これから勤務に入る広部部長と大門は交番の入口に面したデスクのある部屋から休憩室に使っている畳の部屋へと下がる。

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