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第7話

 大門が待ち合わせの場所である駅の改札の前で待っていると、広部と約束していた時間になった。改札から離れたところにある広場からは大時計のメロディが19時を知らせ、改札口の頭上に取りつけられた時刻盤に表示された19時発の案内は次の時刻に発車するものへと変えられる。 「7時か……」  改札口には先程、駅に到着したばかりの電車の乗客達が降りてきていて、その雑踏や話し声で大門の呟き程の小さな声は掻き消された。  もしかしたら、仕事が長引いてしまっているのかも知れない。大門は今度は言葉にせずに、携帯電話をジャケットの内ポケットから取り出すと、ロックを解除した。 『広部聡』  すると、大門の予想通り、携帯電話の画面には広部からのメッセージが通知されている。大門はSNSのコンテンツを開くと、広部が送ってきたメッセージが『ごめん』で始まっているのに目を追っていく。 『ごめん。仕事が抜けられなくなった。本当に……』  大門との待ち合わせる場所に行けなくなってしまった理由と謝罪、それに、また連絡するといった旨が書かれた広部のメッセージに返信するべく、大門は文字を打ち込むべくパネルへと指を滑らせる。何度となく相手の胴着を掴んできたり、何度なく竹刀を握ってきたり、時には1日で何枚もの報告書を書いたりするその指は武骨ではあるが、色気があった。 『別に気にしていない。俺のことは良いから仕事頑張れ』  色気のある指とは違い、色気があるとはとても言えない大門のメールは無事に広部へと送信されたらしい。  携帯電話の画面に広部からのスタンプが表示されると、大門は駅に着いた時と同じようにジャケットの内ポケットに電話を突っ込んだ。

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