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第8話

「さて、どうしようか……」  またホームには電車が到着して、改札口へとやって来た乗客達の雑踏や話し声で大門の呟きはなかったように消えていく。  どうしようか。1人でも寄れそうな立ち飲みバーで1杯といこうか。それとも、酒やつまみを買って、DVDなんかを借りて、家飲みといこうか。  大門はそんなに長くない時間、考えて、とりあえずは駅の改札口から南口へと向かうことにした。  というのも、店は多めだが、最近、新しい店舗が入ったのだという北口ではなく、やや賑わいの落ち着いた南口の方が良いと思ったからだ。 「すみません、大門君……だよね?」  足だけなら俳優やモデルのように長さのある足で歩き出そうとしていた大門へ、それは丁寧にかけられた言葉だった。  大門が声のした方へ振り返ると、そこには大門と同じくらいの年の青年が立っている。高校生の頃に着ていたカーディガンよりは丈が長く、長さのあるジレという感じではあったが、フェルメールの絵画に出てくるモデルが着ている淡い青は彼の色でもあった。 「覚えていないかも知れないけど、同じ高校だった高屋です」  高屋という名前が大門の脳で綺麗の音で響くと、その細胞が体中を熱くしていった。

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