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第12話

 高屋の美作についての話はこんな調子で続いていったのだが、ふっと高屋は声を発さなくなった。大門はそこまででやっと話が止まってしまったのだと気づくと、高屋を見た。 「ごめん、大門君にはつまらない話だったよね。えーと、そんなことがあって、僕は学校を卒業して、講師をしながら、服を作っている。いつか、育生とデザイナーとして生きていく為に……まぁ、まだまだ駆け出しみたいなものだけど」  と言うと、高屋は2枚の名刺を取り出して、大門に手渡す。  1枚には高屋が通っていたと思われる服飾学校の講師の肩書が記されていて、もう1枚には『TAKAYA KOKI』という会社名が入っていた。  華々しくも、地道に服飾デザイナーとして歩んでいる高屋と、おそらく、高屋と同じ道を歩いているだろう美作。  大門は高屋と美作の関係に何とも居たたまれない気分になった。 「高屋さんは美作さんとつき合っているんですか?」 「えっ」  大門が思いもがけないことを口にし、高屋は驚く。  だが、高屋以上に大門が驚いた。 「あ、俺、何、言っているんだ」  大門は困惑しながらも『何でもないです』や『聞かなかったことにしてください』と矢継ぎ早に言葉を言っていくが、高屋はすっかりと落ち着いた様子で微笑んだ。 「僕と育生はね。そんな関係じゃないよ。それに……」 「それに?」 「本当につき合えるなら、僕はつき合いたいと思っていた人がいる。その人は僕のことなんて知らなかったかも知れないけど」 「知らなかった、かも知れないけど……」  大門はそう言うと、足元から崩れていくような感覚に襲われる。  初恋はよく叶わないとは耳にするが、高屋と再会できた夜に叶わぬまま壊れてしまうなんて残酷すぎる。こんなことなら高屋と再会などしなければ良かったと大門は思った。

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