だが、壊れることはなかった。 「大門君。信じてもらえないかも知れないけど、僕は君が好きだったんだよ。高校で初めて出会った時から」 　初恋が壊れてしまう、よりもはるかに破壊力がある告白に、大門はどうしたら良いか。分からない。それでも、高屋にここまで言わせておいて、大門が何も言わないのは明らかに男らしくなかった。 「高屋さん」 「うん？」 「俺も信じてもらえないかも知れないけど、貴方が気になっていた。もし、『美作さんとつき合っている』なんて言われたら、立ち直れなかったと思う。だから……」 「だから？」 　と、高屋は若干、わざとらしく言うものの、「僕も意地が悪いよね」と笑う。 「僕と……」 　ゆっくりと優雅に動く高屋の唇。 　陳腐な言い回しではあるが、時が進むのが遅くなり、一瞬の瞬きさえも永遠のように感じる中、大門はすっと唇に高屋と同じ言葉を乗せる。 「俺とつき合ってくれませんか？」 　静かな大門の部屋には高屋も、大門さえも存在していないように静まり返っていたが、やがて高屋は静かに笑い出した。 「僕も意地が悪いけど、君も結構、意地が悪い」 　高屋は「僕の方から告白したかったのにな」と笑うと、大門は先程の『何でもないです』や『聞かなかったことにしてください』よりもさらに、矢継ぎ早に詫びる言葉を繰り返す。 「ううん、嘘だよ。お詫びに本当のことを言うから許してくれる？」 「本当のこと？」 「僕とつき合ってください、大門君」 　まるでフェルメールの作品の中の女性が着ているような、淡い、青い色のカーディガン。謙虚で、丁寧だが、心臓に病を持つ、大門達とは年が１つ上の同級生。 高校生の頃から大門は高屋のことを見ていた。 　大門の腕の中には高屋がいた。