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第5話 袋のネズミ

「しかしさ」 マルガリータピザをかじりながら、織江さんが言う。 「開発部行って思ったんだけど、営業部、やっぱ異常にむさ苦しくねえか?いや、女の子が欲しいとか言わねえよ?別に男だけでも構わねえけど、いかつすぎるってか、可愛げがねえんだよ。小島くらいだよ、可愛げがあるの。もうちょっと何とかならんもんかね」 「え、俺可愛げありますか?」 「なに嬉しそうな顔してんだよ!他の面子に比べたら可愛いもんだよ」 いや、だって、織江さんに容姿について言われたの初めてだし。 可愛いってのはちょっと引っかかるけど、褒められてるのには違いないから、いいことにしとこう。 「ううん、確かに体育会系な方が圧倒的に多いですよね」 「体育会系は体育会系でも、柔道部かラグビー部だよ。課長席にいるとさ、圧がすげえんだ」 織江さんが嘆く。 「多少体力はあったほうがいいけど、力勝負で仕事取ってくるわけじゃあるまいし、ここまでいかつくなくてもなあ」 圧がすごいのは、織江さんが普段課長席にいないからだと思います。 織江さんがいる時に課長印貰っとかないと、内線で呼び出さなきゃなんないから、皆織江さんがいる時は必死なんです。 「営業部の面子で合コンとかやんねえの?あのメンバーじゃ、小島が圧倒的にモテるだろ」 「たまに合コンしてるみたいですけど、俺は行ったことないです」 「へえ、なんで?」 「……好きな、人がいるので」 え、ちょ、ちょっと待ってなにこの流れ。 「いいねぇ。若いねぇ。同期か?どこの部だよ?」 織江さんはにやにやしながら追い詰めてくる。 「いや、同期じゃなくて、ずっと年上、なんですけど」 「ほうほう。で、どこの部署?」 なに?!もしかして俺の想いばれてるの?! そんなことを考えるほどに逃げ場がない。 「……営業、二課……」 それで、とうとう。 「織江課長、好きです。付き合ってください」 勢いに任せて言っちゃったわけだ。

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