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第12話
「じゃあどうするの?運よく仕事を見つけても、またいつオメガを理由に首を切られるか分からないじゃない」
「それは……」
実際にオメガの就職率の低さは社会問題になっていた。
職場でヒートを起こしたオメガが、同僚にレイプされるといった事件が多発し、雇用者側もオメガの採用には慎重にならざるを得なかった。
「でもだからって、こんな父親みたいな年の人と」
写真を見て、俺は顔を歪めた。
自分がオメガとして魅力がないのは分かっているし、絶対に恋愛結婚じゃなきゃ嫌だなんて言うつもりもない。
しかし突然こんな年齢の離れた相手と結婚だなんて、頭がついていかなかった。
「黙っていたけどね。もううちもお金がないの。あなたの抑制剤とそれを貰うための通院代、馬鹿にならないの」
母親はポツリとそう言った。
「それにあなたの大学費用。瑞樹の大学、授業料がすごく高かったけど、それもあなたに良いアルファと結婚して欲しいと考えてのことだったのよ。それなのに瑞樹ったら卒業後は結婚じゃなく、就職するだなんて言うんだもの」
母が顔を両手で隠し俯いた。
「あなたが、オメガでさえなければ良かったのに」
俺はそれを聞いた途端、体中の力が抜け、ストンと椅子に崩れ落ちるように座った。
「なんだよ、それ」
あんな大学誰も行きたいなんて言っていない。
母親と父親の勧めで、他の大学に進学するなら学費を出さないとまで言われたからそうしたのに。
そもそもオメガなんかに俺だって産まれたくなんてなかった。
俺の想いは言葉になることはなかった。
母親のすすり泣きの声が響くリビングで、将来の夫になるであろう人の写真を俺はただじっと見つめていた。
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