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第13話
待ち合わせのファミレスは平日の昼間だったせいか空いていた。
奥のボックス席に整ったその容姿を見つけ、知らずに頬が緩む。
慌てて気を引き締め、席に向かった。
隣に立つと、男が顔を上げる。
「もう体調は平気?」
俺は成澤さんの質問に頷くと向かいに腰かけた。
「うん。発情期だいぶ前に終わったから」
俺は持っていた紙袋を成澤さんに手渡した。
「先日はご迷惑おかけしました。それとこれありがとう。クリーニングにだしたから綺麗だと思う」
成澤さんは俺に貸したシャツを取り出し、「わざわざクリーニングなんてしなくて良かったのに」と呟いた。
俺は注文をとりに来た店員にアイスティーを頼む。
「あと、抑制剤のお金だけど」
「ああ、それはいいよ。万が一、ヒート中のオメガと出くわした場合に備えて、緊急用に常に持ち歩いているんだ。役に立って良かった」
「でもあれ高価な抑制剤だろ?いいの?」
「ああ。俺が持っていても使えないしね」
そう言って成澤さんは目の前のコーヒーカップを手に取った。
「今日は話し方が違うんだな」
そう言われて俺の顔は真っ赤になった。
「だって今更つくろったって仕方ないし」
「それもそうか」
成澤さんがコーヒーを一口飲んだ。
「年上相手に失礼だって言うなら、改めるけど」
「いや、今の方が良い。俺だって君の前でとても余裕のある年上とは思えない態度をとったしね」
そう言われて、前回この人の前でヒートを迎えた時のことを思い出し、俺の顔が更に赤くなる。
「余裕あったじゃん。俺のうなじを噛まなかった」
「噛んで欲しかった?」
「そんなわけないだろっ」
俺が言い返すと楽しそうに成澤さんが笑った。
タイミングよく店員が持ってきたアイスティーを半分ほど一気に飲む。
ふうと息を吐くと、頬の火照りが幾分か収まった。
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