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第15話
しかし俺の言葉を聞いた成澤さんの表情は途端に強ばった。
「それは絶対にあり得ない。だから探してるんだ。運命の番を。ほら運命の番って相当強烈で甘い香りがするっていうだろ?俺の最低な過去の香りの記憶を、消してくれるんじゃないかと思ってさ」
成澤さんはそこまで話すと寂し気な表情を見せた。
「でもそんなに上手くはいかないもんだな。もう百回以上見合いしてるけど、出会えない。運命の番なんて本当におとぎ話の中にしか存在しないのかもな」
俺は突然胸が痛くなって、泣き出しそうな感情がこみあげてきた。
大丈夫だよ。
そんな無責任な言葉を呟いて、成澤さんを抱きしめてやりたくなった。
「あの……俺のこと試してみない?」
気がついたらそう口にしていた。
成澤さんが不審気な顔をする。
「いや、あのさ。確かに俺は成澤さんにとって運命の番じゃない。でも発情期の時、俺達相性悪くなかったよね?良かったら、俺と試しにちょっと付き合ってみない?」
成澤さんの表情がくもり、口を開こうとした。
そこから飛び出る拒絶の言葉を俺は聞きたくなかった。
「あー。そんなに真剣に考えなくていいから。なんかうち結構経済的にやばいらしくてさ。裕福なアルファと結婚しろって親がうるさいんだよね。その点、成澤さんなら親も喜ぶだろうし。別に番契約とかしないで、お互いに運命の相手が見つかったら別れるってことで、ちょっと始めてみるのもありかなって」
俺は早口でペラペラとまくし立てた。
話しながら、こんなの俺は成澤さんの良いところは金を持ってそうなところだけだと思ってます。って言ってるようなもんじゃないか。
俺が成澤さんなら怒って今すぐ帰るよ。止まれ、俺の口。
自分からの初めての告白を断られるのが怖くて、焦ったあげく俺はどうしようもないことを言ってしまっていた。
俺が自己嫌悪で俯くと、二人の間に重い沈黙が横たわった。
「そんなに大変なのか?」
「えっ?」
「家のその……金のこと」
「いや、抑制剤って高いしさ。本当は俺、四月からデパートに就職決まってたんだけど、内定取り消されちゃったから、これからどうしようかなって」
「そうか」
俺はまた何を言ってるんだろう。この優しいアルファに同情してもらって、気でも惹くつもりかよ。
俺は羞恥のあまり、目に涙が滲んだ。
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