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第23話

「なんかごめんね」   突然静かになったリビングで、成澤さんに謝罪した。 「いいお義父さんだな」 「うん」  さっきの父の話に感動してしまい、俺はこくりと頷くと、泣かないように堪えた。 「瑞樹」  名前を呼ばれて顔を上げると、真剣な表情の成澤さんと目が合う。 「俺、瑞樹のことちゃんと大切にするから」 「うん。ありがとう」  我慢できなくなって頬に零れた雫を、成澤さんが優しく親指で拭ってくれた。  成澤さんがうちに来た一か月後、有名なイタリアンレストランで俺は改めて成澤さんのご両親と対面した。 「今日はみんな成澤だから、これからは下の名前で呼んでくれると助かる」  店に向かう途中、貴一さんからそう頼まれた。 「瑞樹ちゃん。先日はお構いもしなくてごめんなさいね」  会った途端、お義母さんは俺にぎゅっと抱きつき、にこりと微笑んだ。 「いえ」  驚いて、しどろもどろになる俺の肩を貴一さんが抱く。 「母さん、初対面なのに失礼じゃないか」  不機嫌そうに貴一さんが言う。 「そうだよ。瑞樹君が困惑してるだろ」  さりげなく、お義父さんが自分の傍にお義母さんを抱き寄せた。 「まあ、そんな言い方しなくたっていいじゃない。ねえ、瑞樹ちゃん」  お義母さんが拗ねたように、頬を膨らませる。  俺みたいなのが同じことをしたら気味が悪いだろうが、その仕草は可愛らしいお義母さんによく似合っていた。 「歓迎していたいだいて僕は嬉しいです」  俺の言葉にお義母さんは目を輝かせた。 「それはそうよ。貴一がどんなお嫁さんを連れてくるのかずっと楽しみにしていたんだもの」  そう言うとお義母さんは俺と腕を組み、テーブルへ連れて行った。  外に用意された丸テーブルは、薔薇が咲き誇るレストランの庭を見渡すことができた。

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