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第24話

「想像していたよりずっと素敵なかっこいいお嫁さんで、お義母さん嬉しいわ」 「瑞樹はかっこいいんじゃなくて可愛いんですよ」  ぼそりと言う貴一さんの声が聞こえ、俺は顔を赤らめた。 「さあ、食事にしましょう。瑞樹ちゃん、乾杯はシャンパンでいいかしら?」 「嫌なら、他の飲み物でもいいんだぞ」  ドリンクメニューを貴一さんが手渡してくる。 「ううん。シャンパンは好きだから、嬉しい」  それなりにお酒は強い方なので、酔っぱらって失態を犯すこともないだろう。 「乾杯」  晴れ渡った空に鈴の音のようなグラスをあわせる音が響いた。  食事中の会話の中心はほとんどお義母さんだった。  貴一はいかにもアルファで昔から完璧で可愛げがなかった。嫁までそんなタイプのアルファを連れてきたらどうしようと思っていたので、瑞樹がオメガで嬉しいだとか。  甘いものが好きなら、美味しいケーキ屋さんをたくさん知っているから今度一緒に行こうだとか。  俺は笑顔でお義母さんの話に相槌を打った。  デザートのショートケーキの生クリームを口の端に付けたまま話すお義母さんに気付き、お義父さんがそっと拭う。 「ねえ、お義母さんっておいくつ?」  俺がこっそり貴一さんに尋ねると、貴一さんは澄ました顔でシャンパングラスを傾けた。 「父親と同い年」 「えっ?」 「55」 「ええっ」  あまりに驚いてつい声を上げてしまった俺をお義母さんが不思議そうに見る。 「どうかした?」 「いえ、何でも」  俺はぎこちなく笑って、誤魔化した。  食事を終え、駅までの道のりを貴一さんと歩く。  発情期の時の噎せかえる様な甘い匂いは今日のお義母さんからは一切しなかった。  香りの印象と相まって俺の中のお義母さんは妖艶なイメージだったが、今日は全く違う可愛らしい少女のような印象を受けた。  隣を歩く貴一さんを見つめる。  貴一さんが今、お義母さんに対してどういう気持ちを抱いているかを聞くことはできない。  それは彼の過去の傷を抉る様な気がしたからだ。

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