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第31話
俺達は育った環境がだいぶ違うから、お互いの金銭感覚がずれているのは仕方ないことだった。
俺は奥の机の上に飾られたランプに惹かれた。
立ち上がり、ランプを正面からじっと見つめる。
傘の部分が色とりどりのステンドグラスで飾られ、淡い色の光が目に優しい。
いいな、これ。
持ち上げてみると、かなり重かった。
でもこれくらいのが倒れたりしなくていいかも。値段、どこに書いてあるのかな。台座の裏かな。
持ち上げようとすると、ランプが傾いた。
まずい、落とす。
そう思った時、間一髪、貴一さんがランプを支えてくれた。
「ありがとう」
微笑むと、貴一さんが壁際に立っている店員を呼んだ。
「すみません。このランプください」
「えっ。いいの?」
「気に入ったんだろ?」
頷くと、貴一さんは俺の髪をくしゃりとかき混ぜ、レジに向かった。
ついて行こうかと思ったが、すごい金額を聞かされ、レジの前で買う、買わないともめるのも嫌だしと、店内に飾ってある絵画を見て回る。
少しして貴一さんの姿を探すと、ランプの入った袋を持ち、レジ近くの加湿器を眺めていた。
「加湿器欲しいの?」
そろそろ寒くなってきて乾燥しているから必要かもしれないと、俺も同じ物を見つめた。
「いや、この香りいいなって」
貴一さんが見ていた加湿器は、アロマオイルを垂らせば蒸気に香り付けできるというものだった。
俺は商品説明の札を持ち上げた。
「えーっとね。今の香りはラベンダー……」
読み上げて、自分の頬が熱くなるのが分かった。
「どうしても似た香り、探しちまうんだよな」
貴一さんが俺を抱きよせ、髪に顔を埋めると言った。
俺達は同じベッドで毎晩一緒に眠っていた。
俺はオメガとアルファの夫婦は発情期しかセックスしないものと思っていて、それを貴一さんに言ったら驚かれた。
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