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第50話
そんな俺にくすりと笑うと、貴一さんが俺を抱き上げた。
「貴一。二階の部屋使っていいわよ」
お義母さんに言われ、そちらを見ると、お義母さんがお義父さんにリビングの机の上で押し倒されていた。
俺は慌てて目を逸らす。
「二階を使うのは遠慮します。瑞樹の香りに余計な匂いが混じるのが嫌なので」
「余計な匂いだなんて失礼よねえ、あなた。あん」
甘い声を上げる両親を冷めた目で一瞥すると、貴一さんは視線を和らげ、腕の中の俺を見た。
俺を抱いたまま、玄関へ向かう。
玄関にある俺の靴も無視し、そのまま貴一さんは外に出た。
「樹と喜美については心配しなくていい。望月さんから二人とも熱は下がったってメールがきたから。今日は望月さんに泊まってもらって二人の面倒を見てもらおう」
貴一さんの言葉が頭を素通りする。
ただもう体が熱くて堪らない。
駐車場で降ろされると、俺は貴一さんに縋りついた。
「お願っ。もう熱くてダメっ」
「いいのか?外でなんて」
駐車場は道路や隣家からは見えない場所にあった。ここまで入って来る人など居ないだろう。
ただわずかに残った理性が貴一さんのご両親に見られたらと叫ぶ。
俺の逡巡を見抜いた貴一さんが笑う。
「大丈夫だよ。ああなったら当分は家の中に籠りっきりだから」
そう言って貴一さんは俺の頤を掴むと上げた。
「だからこれから瑞樹は俺のことだけ考えて」
唇を唇で塞がれた。
貴一さんの舌が俺の口内を舐めまわし、舌先を擦り合わせる。
抱きついた瞬間、俺は胸の部分に冷たさを感じ震えた。
いつの間にか母乳が俺の白いTシャツの前面をべったりと濡らしている。
もとから母乳の量が少なく、今までこんな風になったことなどなかった。
「いやらしいな。こんなに溢れさせて」
貴一さんは口角を上げると、俺の乳首をTシャツの上から強く摘まんだ。
「あっっ」
ぽたぽたと白い雫がコンクリートの床に零れる。
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