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第18話
皆と同じように普通である。
それが、欠けた自分はいつもどこかで引け目を感じていた。
ずっと、それが尾を引いているのだと、思う。
気の利いた返しも何も返事できないまま俯いたオレの頭に、ぽすんと掌が置かれた。
見ていた時よりも大きく感じるそれは、ぽすぽすと頭を撫でてから離れていく。
今、何をされたのか……
「自意識過剰になれとは言わない。だがもう少し自分を許してやるべきだ」
ぶわ……と耳が熱くなるのが分かった。
頭を撫でられたのだと理解して、動機がして、息が早くなって、ぎゅうっと苦しくなった。
きっと、目も潤んでしまっていると思う。
「今日はもういい、帰りなさい」
「あ、の おつ、お疲れさまでした」
一礼してから部長を見ると、じっとこちらを見ている。
「あの」
「いや、ご苦労様」
きぃと小さな椅子の軋みがして部長の視線が外れた。
何かを考えこむ風な態度は気にかかりもしたが……
改めてもう一度頭を下げてからその日は退社した。
慣れない土地は空気が違う。
それだけで心細くて、辺りを見回す癖がある。
意外とその土地その土地の癖のようなものがあって面白いこともあるが、前を行く背中を見るとそんな余裕もなかった。
「遅れるなよ」
「 は、はい!」
足の長さの違いがここまで移動速度に影響を与えることを、もっと事前に知っておけばよかったと心の中で悪態をついても、今更どうしようもない。
部長は普通に歩いているだけなのに、こちらは駆け足状態だ。
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