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第21話

「私が?」  小さく、右の唇の端が上がる。 「その足で何を言っている」  きつい眼差しが足元に落ちて、居心地悪く後ずさった。  狭いビジネスホテルではあっと言う間に壁で、それ以上逃げられずに視線を落とす。 「気に、ならないんですか ?」 「何をだ」 「あの、自分の……その、」 「とりあえず足を休めるといい」  あの、その、と言葉を言い募ろうとしたけれど、たぶん部長は聞いてはくれないだろう。  部長に倣うように、反対側のベッドに浅く腰掛けて背筋を伸ばした。 「人付き合いは苦手か?」 「 そ、う……ですね  」  引け目を感じる。  言葉の端で性癖がばれるのも怖いし、ばれて拒絶されるのも、怖い。  そう言うのが重なって、人と話すのはオレにとって負担でしかない。  けれど、社会人になった以上それで話が終わってしまうわけでないのもわかっている。 「  あまり、言葉が出る方ではないので」  小林先輩のように明るく、もしくは部長のように余裕を持って話すことができたら違うのかもしれないが、ないものねだりだ。 「威圧的でない、柔和な物腰は長所だ。言葉が出ないなら相手に出させればいい」 「 は、 え?」 「人との会話で緊張すると言うのなら、慣れしかない」 「あ、 」 「まぁ……そうだな、とりあえずは  」  オレの返事を待たず、ふと思い立ったように部長はドアの方に行き、冷蔵庫の中から缶ビールを二本抜き出してきてこちらへ戻ってきた。 「少しアルコールが入れば、ゆっくり休めるだろう」  掌に納まる冷たい缶ビールと部長の顔を交互に見やる。  飲め、と、言うことなんだろうか…… 「あ、りがとうございます」 「先に汗を流すなら行ってくればいい」 「部長は?」 「飲んだ気がしなかったからな、飲んでからだ」  飲んだ気がしなかった……とはいえ、だいぶ飲まされていたはずだ。  部長自身も気怠いのかもしれない。 「お言葉に甘えて お先に失礼します 」

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