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第22話
幸いと言うか、人付き合いも苦手で凡庸なオレにも唯一と言っていい良いところがある。良いところと言うよりはただ体質なだけなので、感謝は親にしなければならないのだが、実はアルコールの類で酔ったことがない。
どれだけ飲んでも酒は他の飲み物と変わらない。
だからオレは、この時酔ってはいなかった。
だから、──だからオレは正気だった。
シャワーから出て、サイドテーブルの上の缶ビールが増えているのに気が付いた。
煽る部長の喉が動いてるのを見て、思わず声をかけた。
「大丈夫ですか?」
鋭い眼差しが、アルコールのおかげか少し丸くなっているように思えたのは、気のせいではなかったと思う。
「ああ」
乱れた襟元と動く喉元が色っぽいと、一瞬目を奪われた。
大人の男なのだと、荒い顎のラインで思う。
いつも整えられた髪が、さすがに少し乱れているのは、初めて見る。
羨望?
憧れ?
尊敬……
……それから、少しの、欲情。
部長は何も言わないし、こうやって一緒の部屋に泊まれてしまうのだから気にはしないのだろうけれど……オレにとって、男は恋愛対象だ。
どう言う風に見られるか、気にはならないのだろうか?
それとも、オレの在り方は部長にとって些末なものなのか……?
自分のちっぽけさに、涙が出そうだ。
「 すみません、先に風呂に行ってもらうべきでした」
薄暗い部屋の中で浮き上がる双眸が、こちらをひたと見つめ返した。
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