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第23話
「 目が赤いな」
部長の瞬きが、遅い。
「 そうだった」
何が……の問いの前に、オレの視界は急回転して、腕を引っ張られた痛みとベッドに押さえつけられた衝撃で息が止まった。
灯りを背負ってオレにのしかかる部長の顔は、影に隠れて伺うことができない。
ただ、わかるのは両目が光を反射していることだけで……
「 あそこで」
「 ぶ…ちょ?」
あそこがどこを指すと明確に言われはしなかったが、オレには思い当たる場所があった。
「お前は、男に 」
「──っ」
ひやりと胸の内が冷たくなる感覚と、顔が赤くなる感覚がした。
ようやく息が吸い込めたと思ったのにうまく吐き出せなくて、続きの言葉を聞きたくなくて固く目を瞑る。
「 襲われて、」
初めて同じ性指向の仲間と会えて、はしゃいでいたんだと思う。
そして自分がそうではないので、酔っぱらった人間の悪質さに気づけなかった。
「 泣いて」
呟く声はうわ言のようだ。
「泣いて 」
「部長……どいて、く ださい」
閉じた瞼の隙に、温かい雫が溜まる。
集まって、溢れて、それがこめかみを伝い落ちるのに時間はかからなかった。
「こっちを見ろ」
命令に、歯を食いしばって首を振る。
「見るんだ」
二度目の言葉はきつく、抗う勇気が出なくて恐る恐る瞼を開けた。
ぽろぽろと、自分の意思とは関係なく涙が落ちる。
「 」
声は、聞こえなかった。
もしかしたら何か言っていたかもしれないけれど、噛みつかれるような口づけに驚いたオレの声の方が大きかった。
「──っ!!」
深く、ベッドに沈み込む。
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