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第48話
今日は星が綺麗に見える と、微かに光る小さな粒を見上げて思う。
空気が澄んで、世界が綺麗に見えるのは興奮しているからだ。
「養子縁組になるんですかね?日本だと」
「そうだなぁ 思い切ったなぁ 」
小林先輩も少し興奮気味のようで、いつものきつい顔が緩んでいる。
「なぁ三船」
「はい?」
「そこの街灯まででいいから、手を繋いでくれないかな?」
え!?と思わず辺りを見回し、人目がないのを確認する。
突然何をと返す前に、ぎゅっと手を握られた。
「なんか、温もりが欲しくて」
そう呻くように言う小林先輩の耳は赤い。
わからないでは、ない。
今日の雰囲気に当てられてと言うか 多分、そんな感じで興奮しちゃって仕方がないんだろう。
だから、ちょっと力を込めて握り返して、「そこまでですよ」と歩き出した。
「なぁ 」
「はい?」
「恋人、いないの?」
「あはは はい」
街灯同士の距離なんてそんなに広くなくて……
あっと言う間に約束の街灯に到着したので、小林先輩がしっかり握っている手を引っ張ろうとした。
「もうちょっとだけ、繋いでてもらえないかな?」
この時間、この辺りに人気はあまりない。
「 じゃあ、次の明かりまで」
「ん 」と頷く意外な素直さに、なんとなく弾んだ気分で歩みを進める。
「気になる奴とか、いないのか?」
そう問われて浮かぶ人がいることはいるけれど、それは言えない名前だ。
「 それ、は 」
歯切れの悪い言い方をしたせいか、こちらを振り返って心配そうに覗き込んでくる。
「どうした?」
「いない わけじゃ、ないんですけど 」
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