49 / 105

第48話

 今日は星が綺麗に見える と、微かに光る小さな粒を見上げて思う。  空気が澄んで、世界が綺麗に見えるのは興奮しているからだ。 「養子縁組になるんですかね?日本だと」 「そうだなぁ  思い切ったなぁ  」  小林先輩も少し興奮気味のようで、いつものきつい顔が緩んでいる。 「なぁ三船」 「はい?」 「そこの街灯まででいいから、手を繋いでくれないかな?」  え!?と思わず辺りを見回し、人目がないのを確認する。  突然何をと返す前に、ぎゅっと手を握られた。 「なんか、温もりが欲しくて」  そう呻くように言う小林先輩の耳は赤い。  わからないでは、ない。  今日の雰囲気に当てられてと言うか  多分、そんな感じで興奮しちゃって仕方がないんだろう。  だから、ちょっと力を込めて握り返して、「そこまでですよ」と歩き出した。 「なぁ  」 「はい?」 「恋人、いないの?」 「あはは  はい」  街灯同士の距離なんてそんなに広くなくて……  あっと言う間に約束の街灯に到着したので、小林先輩がしっかり握っている手を引っ張ろうとした。 「もうちょっとだけ、繋いでてもらえないかな?」  この時間、この辺りに人気はあまりない。 「  じゃあ、次の明かりまで」  「ん 」と頷く意外な素直さに、なんとなく弾んだ気分で歩みを進める。 「気になる奴とか、いないのか?」  そう問われて浮かぶ人がいることはいるけれど、それは言えない名前だ。 「  それ、は 」  歯切れの悪い言い方をしたせいか、こちらを振り返って心配そうに覗き込んでくる。 「どうした?」 「いない  わけじゃ、ないんですけど  」

ともだちにシェアしよう!