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第50話
「三船が好きだから、恋人として付き合って欲しいっ!!」
叫ばれた言葉が他の人に聞かれたら……なんて心配する余裕はなかった。
押さえられている肩が痛いだとか、
顔が真っ赤だとか、
ちょっと涙が滲んでるとか、
ショックで脈拍数がおかしいな とか、そんなことばかり考えてた。
逃げ道のない言葉から、どうやって逃げ道を見つけようかと、頭の中はぐるぐると高速で回っている。
「オレ、 あの、オレ 」
「 返事は、別に今じゃなくて、いいから」
肩の手の重さがなくなり、軽さにほっと息を吐く。
「 わかりました。ただ……先輩はやっぱり先輩で、そんな風に見たことがないので 」
つい出てしまったのは断るための常套句で。
無意識に出かけたその言葉に戸惑った。
なぜ?
あれほど望んでいた、自分に興味を持ってくれている人が現れたと言うのに。
「 わかってる。よく考える三船らしいと思う。でも、そうやってよく考えて、俺の見え方が変わってくれたら嬉しいと思うから お願いします」
直角に頭を下げて差し出された右手は、反応があるまでこのままじゃないかと思わせる力強さで。
仕方なく指先でちょんと触れた。
「 あの、善処してみます」
固くなってしまった返事に笑われながら手を絡め直され、「曲がり角まで繋いでて」と真っ赤な顔の小林先輩に言われ、小さく頷き返した。
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