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第51話

 エレベーターから出ると、会社には似つかわしくない小さな子供がこちらを見た。 「え!?」  迷い込むような場所じゃない。  ばっちり合ってしまった視線の為に、無視もできずに近寄った。  小さな背丈は  比較に出来る子供を知らないので年の判別はできないけれど、小学生だと言うには小さすぎる気がする。  利発そうな顔で、こちらを警戒しているのかじぃっと見詰めてくる。 「君、ここでどうしたのかな?」  怯えさせないようにしゃがんで尋ねかけると、狼狽えてきょろきょろと辺りを見回し始めた。 「迷ったの?」  話しかけてみるが反応が返らず、小さな子供との接し方が分からないオレはこれ以上何と言っていいの途方に暮れ、同じようにきょろきょろと辺りを見渡した。  親らしき人は…… 「   すみません、うちの子です」  視界の端に映った白い靴が慌ててこちらに駆けてくる。  細い足首が映って、会社勤めには向かない華やかで落ち着いたワンピースが目に入った。  顔に覚えは   ない。  見上げるのも失礼かと、立ち上がって会釈する。 「ご迷惑おかけしました」 「いえ、   こちらに御用が?」  服装通りの華やかな女性で、はっきりとした目鼻立ちは、誰が見ても美人だと太鼓判を押すだろう。  嫌味ではない程度に鼻をくすぐるのは、香水   多分、くちなしの匂いだ。  自分から言い出さなければ、子持ちには見えない。 「いえ、もう呼んでいただいているので」  にこりと笑う顔に釣られて「そうですか」と笑い、会釈して立ち去ろうとした時に部署のゲートが開いて見慣れた人が顔を見せた。

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