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第56話

 ベッドに這い上がり、部長に背を向けてへたり込むように座り、そろりと下腹部の茂みへと指を滑らせた。  指先の感触に反応して、ピクリと動くがそこまでで……  両手で包み込んで上下に扱いてみても、反応らしい反応が返らない。 「   ぇ 」  感触はするし、気持ちよさもある。  けれど、  ぐぅっと拳を握り込んで、奥歯を噛み締めてから片腕を背後に回す。  腰の固い骨の感触を伝いながら、双丘の間へ指先を下ろしていく。  息が詰まるような圧迫感。  準備の為に触れることはあっても、自慰の為に触れたことはなくて……  こぷりと溢れて伝い出たローションを絡めて、指を中で動かして   余りの気持ちよさのなさに、動かす手を止めて項垂れた。       二進も三進も行かず、救いを求める気分で振り返るが、微かな紙の触れ合う音がして何も動きはない。  途方に暮れて、気まずいままにベッドを降りた。  何か妙案があったと言う訳ではないけれど、部長の視界の端にでも入ればこちらを見てもらえるかもと淡い期待を抱いてその前に立つ。  「部長」と問いかけるのも憚られる雰囲気で……  淡い期待が無駄だったとわかり、涙を堪えるためにぐっと奥歯を噛み締めるが、オレの涙腺は限界だったらしく、ぽとんと音を立てて足の傍の絨毯に雫が盛った。  それでも、やっぱり部長は書類に目を遣ったままだ。  盛り上がった雫を膝で擂り潰し、部長の足の間に膝をついた。  そこから見上げると、書類が邪魔で部長の顔が確認できない。  室内灯で落ちた影が書類を黒く染めているだけで、今どのような表情なのか何もわからない。  それが不安で……  小さく出たしゃくりを飲み込みながら、口で部長のスウェットをずらす。  止める声も上がらず、だからと言って正解だとも言ってもらえないままに、下着もずらしてソコに顔を近づけた。  牡のニオイに躊躇をするも、もう自分に残された手段はない。  塩気を舌先に感じる。  唇で柔らかく食んで行くと、質量を増したソレに喉の奥を突かれて呻き声が出た。

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