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第79話
「順番は 飛ばさないように、出来るだけ 頑張るから」
逃げ道を作るのが年不相応に幼い感じに思えて、小さく微笑んで困り顔の小林先輩を見上げる。
「あー……嬉しくなれるようなこと、一杯考えるから 」
頬を掴まれて、むにむにと揉まれるとなんだかからかわれているようで……
「柔い……」
「 や、やめてくださいよ 」
「 キスしたいんだけど、デートしてからだっけ?」
「まず 付き合ってから……だし、まだちゃんと返事も 」
口の中で呟く言葉を、小林先輩は聞いてくれたらしい。
こくこくと頷くと目の前で片膝をつき、オレの手を取る。
「わかった。じゃあちゃんとする」
「えっ!?ちゃんとするのはオレで……」
何事かとびっくりするオレを置いて、
「幸せにします!一緒に笑って過ごせるように努力します!三船を泣かさないと誓います。オレの元に来てください!」
宣言と共に指先にちゅっと口つけされて、頬が赤くなるのを感じた。
今、何をされたのだろうかと戸惑っていると、怪訝そうにそろそろと顔を覗き込まれた。
「あれ……なんか間違えた?」
「まち、間違えたって言うか あの、 」
男に生まれた人生で、まさか片膝ついて告白される日が来るなんて、まったく考えてもみなかった。
これは ちょっと だいぶん、恥ずかしい。
「先輩が 振られるのが分かった気がします」
「え︎!?あ、服!汚れたままだったな!ちょっと待ってろ!着替えてくるから!」
「ちがっ そうじゃ っ正装はダメですよ!」
バタバタと走り込んでいった部屋に向かって言うと、さらに「え︎!?」と返事が返り、小林先輩が何を考えてるのかわからない……
「あ、花?花かっ!」
「花もいらないです!」
テンパってるのかなぁとか、ちょっとズレてるなぁとか思うのが楽しくて……いつの間にか笑っているオレがいた。
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