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第86話
幸せそうな家族像を思い出して、ぽとりと雫が落ちる。
泣き出しても意に介さない部長は、きっとオレがなぜ泣いているのかも気にしないんだろう。
薄い皮膚の辺りを撫ぜられると、骨が近いせいか落ち着かない気分になってくる。
「 ひ、ン んっ 」
触れられた箇所から響く疼きが体を駆け上がってくる。
「終わりにしたいと言う割には反応がいいな」
「んっ それ、は 」
晒すように足を抱え上げられれば、部長に触れられて反応したソコが目に飛び込んできた。
確かな証拠を見せられてしまえば否定の言葉もできず、唇をぐっと噛んで顔を背ける。
「噛むな。また傷になる」
「 」
唇に割り込ませてくる親指は骨っぽくて力強く、堪え切れずに口を開けると容赦なく咥内へと侵入してくる。
反射的にそれに舌を這わせ、ちゅっと吸い付く。
こじ入れられる指が上顎を擦り、鼻に抜ける声が零れる。
「……ン、 っ こ、小林先輩と お付き合いすることに、しました 」
「あんな男とか」
「それ で、も 好きだって、言ってくれて 」
「 」
「オレは 相思相愛 で……愛されたい から ぁっ!ソコ、は っ」
巧みな指先が敏感なところに触れると、堪えようとしても体が跳ねる。すっかり知られてしまった性感帯を愛撫する手は、オレよりもこの体のことをよく知っているようだった。
「あられもない声を上げて他の男に抱かれておきながら、何を言っている」
侮蔑のような視線。
他の男の元に行くと言いながら抱かれるオレは、酷く滑稽なんだろう。
それでも、抱かれずにはいられない、無様で情けない自分は……
「言葉がそんなに欲しいのか」
意地悪げに唇の端が歪む。
部長の考えにひやりとしたものを感じ取って、咄嗟にずり上がって逃げようとした。
けれど力ではかなうはずもなく、ぐっ と力任せに侵入しようとした温もりに首を振った。
「やっ、だ、め ゴム、も っローションもっ ぁ、あン!! 」
一番太い箇所が入り口をゆるりと擦る。
一気に犯してくれたならば、頭を真っ白にして善がることもできるだろうに、没頭できるほど激しい刺激でもなく、だからと言って無視できないくらいの快感に、体中の力が抜けて突っ伏した。
「あ、あ 」
腰を抱えられ、しっかりと抱きこまれてしまえば逃げ道はなく、
「 や、 ぃや、も ァ、 」
こちらが苦しくて辛いのが分かっていながら、ゆるゆると体を揺すられて……
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