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追加話   花

 恥じらいながらも、しれっと人のモノを咥えるこの男の噂を、聞かない日はない。 「酒豪重役達と飲み比べて無双した」 「花屋に貢がれている」 「某財閥系グループの上の方から声をかけられている」 「取引会社の会長と茶飲み友達」 「社長が引き抜きたくてウズウズしている」 「某会社の御隠居の家に呼ばれる仲だ」 「頼んで取れない予約&繋がらない人脈はない」  云々。  幾つかは事実だと知っていたが、今日新たに聞いたのはさすがに嘘だろうと思わず鼻で笑った話だった。 「どこぞの王族に求愛されたそうだな」  視線がゆっくりと上がって、名残のように舌から繋がる唾液がプツンと途切れて、  それは一瞬、  見たこともないほどの赤面、爪先まで朱に染まって…… 「あ   あの 」  わなわなと震える濡れた唇が、言葉を探しているようだった。  赤くなった顔を隠そうとして、耳も熱いことに気がついたのか慌てて押さえるも隠せるはずもない。  肌が白いせいか全身が染まっているのがよくわかって…… 「ど、どこからその話をっ!」  こちらから背けられた目が羞恥からか潤んで。否定をしないと言うのは事実だと言うことなんだろう。 「違う 違うんです!アレはただの戯れで 」 「戯れ?」 「王子も本気ではなくて!」  縁に溜まった涙が今にも溢れそうだと、出来もしないのに現実逃避したい頭が勝手に考える。 「   で?」 「あの、 こ 恋人に妬いて欲しかっただけのようで。恋人がいらっしゃらない時は必ず間に人を置きましたし、近くにも来られなくて   特に何かあったわけでもな    」  勢いがよかった癖に不自然に途切れ、視線が彷徨った。  利き手と同じ側に視線が行くのは、嘘を考えているサインだったか……? 「  何もなかった  です」  そんな視線の向きなんか見なくとも、何かを隠しているかどうかぐらい直ぐにわかる。  どれだけその体を抱いて、反応を見て来たと思っているんだろうか? 「   あっ」  細い手首を掴んで引っ張ると、あっさりとベッドに転がる辺り、抵抗する気はないんだろう。  従順な顔をして、すべてを目の前に投げ出すように無防備なのに……

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