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第5話

「すぐにじゃなくていいけど」  抱き寄せられた頭が、リョウさんの肌から直接その鼓動を拾う。いつもより強く早く打つそれを聞いて、冗談じゃないことを知る。  リョウさんが僕のことで心を乱すなんて……  なにがどうしてそんな風に思ったのかは分からないけれど、リョウさんは本気で僕にプロポーズしたのだ。  プロポーズ……結婚。家族……? 「な、んで……?」 「そろそろ独占しとこーかと思って」  リョウさんの指が背筋を辿り、首元の一点をトンと突いた。そこには他の男に残された咬み跡が残っている。三日前のもう半分黄色く滲んだ痕跡を気付かれていた。  えっちはしてない。今年始めたバーテンのバイトの時に調子に乗った客に絡まれただけだと言い訳してみても、信じて貰えるだろうか。  考えてみたがすぐに無理だと諦めた。今回は違っても、今までに他の男とも寝てきた過去は消えない。

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