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第8話
「両方……」
それでも素直にそれが欲しいとは言えなくて、いつも通りの小さな我儘で返す。
「じゃあとりあえずこっちな」
長い指で摘み取られたリングがゆっくりと僕の薬指に滑る。なんの抵抗もなく通ったそれは、当然だという顔でそこに収まった。
シンプルな細めのリングは、思うより重い。
「外すなよ……だけど、独占契約を破ったら指ごと切り落として捨てる」
真っすぐに見つめたリョウの言葉に嘘はない。
「……一生外さない」
素直じゃない僕は涙のひとつも流せないけれど、ちゃんと本当の気持ちを伝えた。
最近遊びを辞めた僕は、恋愛が面倒になったとか、遊び過ぎてもういいかな、なんて周りには言っていたけれど、それは嘘だ。本当のところはリョウさん以外と寝る気になれなかったのが理由だ。
どうしたって手に入る相手じゃないと分かっているからリョウさんの代わりになる人を探していた。けれど他の男と寝れば寝ただけ代わりになる男などいないのだと思い知らされただけのことだ。
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