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「分かりました…ごめんなさいでございます」
さすがに怒られるだろうかと思いながらも、
にっこりとほほ笑みかけると
「…変わらないな」
気が抜けたのか、八の字に下がる眉。
そして困った様に俺へと笑った。
「えーでも、かっこよくなったでしょ」
それがとても嬉しくて、思わず調子づく。
「そうだね。大人っぽくなった」
先生の方がかっこよくなったけどね。
俺からするとこんなにもイケメンな先生を周りが放っておくとは思えなくて、相手が出来てないか、告白されたりしてないか心配だよ。
「…惚れ直した?」
だから少し安心を提供してほしいな。…なんて思ったりしちゃうのだけど中身はちっとも大人になれてないのだと気付かされる。
「ここの仕事ではね、私情を挟むことは命を売るのと同じことだよ。」
どこの戦場だよ…。だなんて思うけど言ってることは理解出来る。ここへ来る患者の殆どは正常な判断が出来ない児童が多く、暴力的な行動や、いわゆる猟奇的思考をしている子達もいる。
職員が怪我を負うことも度々あって、先生が仕事中私情を挟まないのはそういった事態にならないよう、また患者へそういった事態を起こさなくて済むよう職員が予め防ぐためだ。
そんな患者思いの先生。
俺はこの人に救われてこの施設を退院した。
だから分かるんだよ。そこは重々知ってきたつもりだったから。
「今は休憩時間だよ」
休憩時間の時くらいいつもの先生でいてもいいと思うのに。その時くらいリラックス出来たらいいのに。
先生の事だ。とっても頭はいいのにそういう所は不器用で…俺が何とかしてあげたいな。なんて。そんなこと十年早いって言われそうだから絶対言わないけど。
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